第6章 流されて異界
第133話 アンドバリの指輪
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…。例えば、ワザと犬歯を剥いてニヤリと笑う、何処からどう見ても肉食獣が獲物を前にした時に発する類の笑みとか、昨夜の犬神使いを相手にした時に発して居た、人を小馬鹿にしたような笑みなどの少々、問題のある笑い顔とか。
しかし、この時に浮かべた笑みは、タバサや有希がその笑みを見た瞬間に発する気が一番好ましい……と思う笑みをチョイス。ハルヒやさつきなら、何故か怒ったように視線を逸らして仕舞う類の表情。
警戒……ではないと思う。しかし、何か逡巡に近いような気を発しながら、それでも手の平を上に向ける有希――
その、かなり華奢な白い手の平の上に蒼く光る指輪を置く俺。
しかし……。
「私はこの指輪を預かる事は出来ない」
強い口調と言う訳ではない。しかし、これは拒絶。
そして、手の平の上に置かれた指輪を、そっと俺の方へと差し出して来た。
「この指輪はあなたを護る為に、その友人があなたに預けた物。その様な大切な物をわたしが預かる訳には行かない」
淡々とした口調で、至極一般的な答えを返して来る有希。
成るほど、未だ彼女はこの指輪の正体に気付いていない、と言う事か。
もっと長い時間、指輪に触れていたら分かるかも知れない。それに、もしかすると俺が持って居た時間が長すぎて、湖の乙女の気配が薄く成り過ぎて居る可能性もある。
出来る事ならば、言葉を弄する前に気付いて欲しい。そうしなければ、歴史に影響……と言うか、俺の言動により彼女の未来を確定させて仕舞う可能性がある。
彼女が心からそう願い転生を行ったのなら問題はない。それを止めてくれ、と言える立場に俺はいない。しかし、ここで俺が、有希の未来はハルケギニアに転生する可能性が高い、と告げるのは――
「その通り。その友人に取って俺は他の何モノ……多分、自分自身と比べても俺の方が大切だ、と答えるような人物」
湖の乙女も相手に因って順位付けを行うような人間ではない。しかし、俺と、俺以外と言う対応の差は行っていた。
最初は俺を契約相手と為したが故に、そう言う対応の差が出るのかと思って居たのですが、それは多分間違い。おそらく、彼女は今、目の前でアンドバリの指輪を俺に対して差し出している少女であった時の記憶がある。
その記憶に従えば、俺を契約相手に選ぶのは当たり前。
そして、俺とそれ以外の人間……と言う対応の違いも出て来て当然でしょう。
俺の言葉に、表情からはそれまでと違う様子を窺う事は出来なかった。しかし、心の部分は違った。今の有希は明らかに動揺と思われる気配を発して居る。
今までも。そして、今もその友人と言うのが女性だなどとは口にしてはいない。しかし、言葉のニュアンスや、俺の発して居る気配でそう感じ取る事は出来たはず。
確かに今までも微
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