第6章 流されて異界
第133話 アンドバリの指輪
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成り、更に意味不明の行動に対して、しかし、眉ひとつ動かす事のない彼女。
まぁ、ハルヒなら行き成り何をし出すのよ、……とツッコミを入れて来るトコロでしょうが、有希ならば俺の行動にある程度の意味がある事は理解して居ますし、何より、俺の事を信用して居るので余計な茶々を入れて来ようとはしない。
普段とは違う詰襟のホックを外し、上から順番にボタンを外して行く俺。
そして、上着の内側の胸ポケット。その一番奥から取り出した小さな蒼い光を、彼女の目の前に差し出した。
その瞬間、指輪に籠められた霊気に反応したのか、周囲の精霊が活性化。見鬼の俺の瞳には、それが淡い光輝として感じられる。
「これを今回の戦いの間、預かってくれへんか?」
おそらくプラチナ製と思しきリングに蒼い宝石。宝石自体の材質に付いては不明。ただ、かなり巨大な霊力を宿して居るのは確実。……と言うか、俺が彼女、湖の乙女から預かってから既に半年。最初に彼女から渡された時よりもその輝きが増した事から考えると、俺の心臓に一番近い位置で長時間持って居た事により、俺の龍気を吸収した可能性も大きい。
これに籠められている霊力を一気に開放すれば、奇跡と呼ばれる魔法の行使すら簡単な事と成るでしょうね。
「これはハルケギニアに残して来た友人が大切に――。多分、自分の生命よりも大切に守っていた物」
この指輪を有希に預かって貰いたい。これから出向く戦場で失くしたり、壊したりしないように。
そっと差し出すアンドバリの指輪。蒼の宝石は、仄暗いふたりの丁度中間辺りで淡い光り……普通の人には見る事の出来ない光。精霊光を発していた。
俺の言葉に促されるかのように、その指輪に触れようとした有希。しかし、何かに……まるで、急に指先に走った静電気に驚いた時のように、指輪にしっかりと触れる事もなく指を引っ込めて終った。
そして、上目使いに俺を真っ直ぐに見つめる。ただ、この時の彼女が発して居た雰囲気は、先ほどまで彼女が示していた哀と言う感情などではなく、……これは多分、疑問。
但し、ほんの少し触れただけで彼女が、この指輪の正体について何処まで気付いたのかは不明ですが……。
「確かに巨大な霊力が籠められた呪物である事は間違いないけど、これを持つだけで呪いが降りかかる、などと言う危険なモノでもない」
この指輪は、俺に取っては正に呪いの指輪であった事は間違いない。しかし、逆に言うと、コイツが居なければ、俺が今ここに生きている事は不可能だったのも事実。
それに、
「大丈夫。こいつはオマエの身を危険に晒す事は絶対にない。それだけは保障する」
この指輪に籠められた呪と言うのは、そう言う類の呪。
俺も幾つかの笑顔と言う物を使い分けるが…
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