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硝子の心
1部分:第一章
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れた。清香はそれはわかったがやはりベッドの中から起き上がろうとはしなかった。その日はそのまま一日を過ごしてしまったのだった。
 その日の夜もベッドから出ようとはしない。母は結局御飯に一切手をつかなかった娘を心配した。しかしそんな母に夫である清香の父が言うのだった。
「放っておくしかないな、それは」
「またそっとしておくしかないっていうの?」
「言ってもな」
 こう言って首を振る父だった。
「どうしようもないからな、清香にはな」
「そうなのよねあ」
 母も溜息と一緒に言うのだった。
「昔から。何かあったらすぐに落ち込んで」
「暫く起き上がるまではな。そっとしておこう」
「わかったわ。けれど」
 母はここでまた溜息を吐き出した。
「大丈夫なのかしら、これで」
「生きていけるかどうかか」
「そうよ。あんなに気が弱くて」
 清香の友人達と同じことを心配しているのだった。これは母親だけあって彼女達のそれと比べてもかなりのものであった。実の娘のことだからだ。
「これから。本当に」
「どうにかなってもらうしかないな」
 父も心配する顔であった。
「あいつにはな。けれどな」
「昔からなのよね」
 また困った顔を見せる母だった。
「本当にね」
「そうだな。どうしたものかな」
「せめて。ある程度で落ち込むのを止まってしまって」
 母の言葉はここでも清香の友人達と同じことを言っていた。

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