12.あの日
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という時は金剛を頼るよう、青葉に厳命してある。鈴谷と青葉はまだ練度が低いし、その上重巡としては二人共装甲が薄い。場合によっては軽巡の一撃すら致命傷になることも充分考えられる」
「そうネー。当たりどころが悪いと一発大破もあるかもネ…」
「応援で空母勢も出せないこともないが、資材量から考えると、金剛たち四人が護衛では限度だ。万が一の戦力も残しておきたい。砲撃戦なら金剛たちに勝てる相手はいないはず。鈴谷と青葉を頼むぞ金剛」
「わかったネ! テートクのためにも鈴谷と青葉はワタシが絶対に守り通してみせるヨー!!」
昨日までの私なら、恐らく鈴谷と青葉をここまで大切に扱う提督に対し、ヤキモチをやいていたことだろう。しかし今なら…絶対的な信頼と親愛の証を左手に宿した今なら、素直に彼のために二人を守ろうと思えた。彼が愛しているのは、私なのだから。
「じゃあ行ってきてくれ。いつものように無理はしないように。少しでも異変を感じたら、たとえ小破判定でも撤退するように」
「わかったネー!! それじゃあ言ってくるヨー愛しのダーリン!!」
「ダーリンはやめろッ!! 恥ずかしいからッ!!」
「五月雨ー! ワタシがいない間、テートクのことをよろしくネ!!」
「おまかせ下さい! 金剛さんも充分気をつけて、頑張ってくださいね!!」
「おーらい!! じゃあテートク、五月雨、行ってくるネー!!」
「頼んだ!!」
「いってらっしゃい!!」
踵を返して執務室を出る前に、私はもう一度彼を見た。いつもの優しい彼の顔がそこにあった。あの顔を見るだけで私は、何者にも負けない力が自分の中に沸き上がってくるのを感じた。指輪の力だけではない。彼との絆が私に力を与えてくれていることが、私には実感できた。それは彼も同じようで、彼もまた、私を見つめて力強く頷いてくれた。私はドアが閉じるまで、ジッと彼と見つめ合った。
私が見た彼の姿は、それが最後だった。
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