暁 〜小説投稿サイト〜
彼に似た星空
12.あの日
[2/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
索敵を行います!!」
「お前出撃の度に索敵も砲撃も雷撃もお任せって言ってるけど、その割に“相手は気付いてない”とか言うじゃんか…青葉が出撃の時はうちの胃薬がマッハで消えてくよ…」

 青葉もちょっと変わった好奇心旺盛な子で、着任するなり“週刊青葉新報”なる雑誌の発行許可を彼に具申していた。青葉自身が取材し、記事を書き上げ、わざわざ印刷所と交渉して製本までやって酒保で発売している。時々私も買って読んでいるが、時に笑い、時に笑い、時に笑えるうさんくささの記事が満載だ。

「…うう…司令官、それは青葉へのモラハラとして週刊青葉新報に載せていいですか?」
「却下だ。そんなことしたらむこう10年は週刊青葉新報の発行を提督権限で禁止する」
「そんなぁ〜…」

 彼は出撃の前には、毎回こうやって必ず一人ひとりに声をかけてくれる。死地に赴く私たちにとってこれがどれだけありがたいことか、私はよく知っている。出撃前にこうやって生きることへの執着を確認してくれるから、私たちはこのかけがえのない日常を守ろうと思える。同時に、このかけがえのない日常の中に戻りたいから、生きてこの鎮守府に戻ってこようと強く思える。彼がそれをわかってやっているかどうかは分からない。でも優しい彼のことだ。きっと心から心配で、出撃前の私たちに、こうやって語りかけてくれるのだろう。

「ではよろしく頼む。晩飯までには戻って入渠まで済ませることを厳命とする。今日は第六駆逐隊のみんなが作ってくれた甘口カレーだ。ちゃんと食べないと電泣いちゃうからな」

 私たちが勢いよく返事し、敬礼を返す。彼も最後のこの瞬間だけは、真剣な眼差しで敬礼を返した。

「金剛、ちょっと残ってくれ」

 出撃するため部屋から出て行こうとしたとき、私だけが彼からこう声をかけられた。視界の隅で榛名が少々つらそうな顔をしているのが見えた。罪悪感が少し湧いたが、それを顔に出してしまっては逆に榛名に対して失礼だ。私はあえて榛名の様子に気付かないふりをして、部屋に残った。

「テートク、どうしまシタ?」
「えーとだな…ゲフン」
「What? どうしたんデス?」

 彼は顔を耳まで真っ赤にしながら、俯いてしまっている。一体どうしたというのか。

「テートク! 黙ってたら分からないデース! 日本男児ならハッキリ言うネー!!」
「あのな…? まず、こんなことは言いたくないんだけどな…?」

 彼の隣で書類を片付けている五月雨が、笑いをこらえきれないらしく、自分の口を押さえてプププと笑っている。一体何がおかしいのか。

「んーとな…まず注意だ。金剛、気付いてる?」
「何デスカー? ワタシ、注意されるような悪いことは何もしてないでデスヨ?」
「気付いてないのか……どれだけ緩んでるんだ……さっきからず
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ