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Deathberry and Deathgame
Chapter 4. 『堕ちてゆくのはぼくらか空か』
Episode 23. Rainy, Sandy
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時には早く人通りの少ないそこの一軒で、私はビーストテイマーの少女、『竜使い』シリカと向かい合って座っていた。

 きっかけは、私が練習しているところの傍に彼女が落っこちてきたことだった。
 どうやら上空で空中歩行に失敗したらしく真っ逆さまに墜落してきた彼女は、全身を襲ったであろう多大な不快感に顔を歪めながら上体を起こした。遅れて降り立った相棒の小竜をなだめるように撫でつつ上を見上げ、空中から様子を見ていた私と視線が交錯。

 何を言ったものかと一瞬迷った私が、ひとまず彼女の無事を問う前に、

「ぅわぁっ!! と、『闘匠』のリーナさん、ですか!? あ、あたし、ファンなんですっ! サインください!!」

 いきなりサインを求められた。

 その余りの勢いに、捲れてるスカートを直したら、とか、私筆記体書けないんだけど、みたいなツッコミを入れるのも忘れ、誰何を問うことすらもなく頷いてしまった。
 差し出された短剣の鞘にメーキャップアイテムのペンでぎこちなくサインを施し、そのままテンションマックスな彼女によって褒め殺しに遭い。更には勢いで空中歩行の指導をしてあげたり、同じ短剣使いだからということで軽く模擬戦闘をやってみたりと、フルコースのファンサービスを提供してしまった。別に後悔するようなことではないのだけれど、慣れない事をしたせいでドッと疲れが出てきた。やっぱり、キャラに合わない仕事はするもんじゃない。

 お礼がしたいという彼女の言葉に甘えて奢ってもらったメイン料理三品のうち一皿目をつつきながら、私は彼女の感謝の言葉に素っ気なく答えた。

「貴女もボリュームゾーン内で名は通っているでしょ? いつかの情報ペーパーで読んだ記憶がある。レアモンスター『フェザーリドラ』のテイムに成功した『竜使い』さん」
「あ、あはは、そんなに大したものじゃないですよ。それに、最前線で活躍してる最強の短剣使いさんに比べたら、あたしなんて全然……」

 恐縮したように手を振りながら、彼女はサンドイッチを齧る。私だったら十秒とかけずに平らげてしまいそうなそれを、少しずつ啄むように食べていく。小動物を思わせるその姿を見ながら、手元にあるローストビーフを三枚まとめてフォークでぶっ刺し、口に突っ込んで乱暴に咀嚼。嚥下してから再び口を開く。

「それでも、ボリュームゾーンのプレイヤーよりは腕が立つでしょ。少なくとも、さっきの模擬戦闘ではそう感じた。着てる装備もそれなり以上みたいだし、そんなに卑下することでもないと思う」
「い、いえそんな。結局一太刀も当てらんなかったですし、この装備だって全部キリトさんからもらったもので――あっ、い、今のヒミツでお願いしますっ!!」
「いいけど、貴女キリトの友人なの?」

 二皿目を完食し、三皿目に盛られたタンドリーチキ
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