Chapter 4. 『堕ちてゆくのはぼくらか空か』
Episode 22. Stand on the Sky
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理法とかあるか?」
「グリルがいい。バター焼きがベスト」
「あー、楽だしそれでいいか。あとはシーザーサラダにスープに……」
いつものしかめっ面のまま、てきぱきと料理を進めていく一護。流石、料理スキル七百越えは伊達じゃないみたいだ。
これでエプロンの一つでも付けていれば立派なヤンキーシェフの完成なんだけど、この前買ってきて勧めたら断固として拒否された。なんでも、男がエプロンするなんざ女々しい、とかなんとか。世界中のクッキングパパに喧嘩を吹っ掛けるような勢いのエプロン拒絶反応によって「一護にシェフのコスを着せて鼻で笑う計画」は第一段階で頓挫した。無念。
「……よし、こんなモンか――」
「できた?」
一護の独り言を遮るように、私はキッチンに文字通り飛び込んだ。
オーブンの前でしゃがみこんでいた一護は跳躍した私を見ても動揺の欠片も見せず、しかしシカトもせず、肩で担ぐようにして私を受け止めた。
「ぐぇ」
「ジャマだぞオラ。どっか行け」
「……美少女が空から降ってきたというのに、この受け止め方はどうかと思う」
「自分で言うか、それ。つうかわざわざ受け止めてやったってのに、ブーたれる方がどうかと思うぞ」
「ノリ悪い」
「言ってろ」
そのまま彼は私のベルトの辺りを掴むと、私をソファー目掛けて放り投げた。ぼふんっ、という柔らかい音と共に私はクッションの山に埋もれ、暖かな暗闇が私を包む。
「……ふう、至福」
思わずそう呟く私の背後で、カチャカチャと食器が触れ合う音がした。
振り向くと、一護が出来上がった料理を運んでいるところだった。全部任せっきりは悪い気がして、私も運ぶのを手伝う。
根菜とウィンナーたっぷりのミネストローネに、葉野菜中心のシーザーサラダ。メインディッシュの黒ロブスター(仮)のグリルは特大の鉄板の上でバターの良い匂いを漂わせ、バスケットに山と積まれた黒パンがテーブルの四分の一を占めた。
四人掛けのテーブルに向かい合うようにして二人で座り、私のストレージに常備してあるワインを互いのグラスに注ぐ。メインの魚介に合わせて選んだ白ワインが、透明なグラスを満たしていった。
「それじゃ、六十一層フィールドボス討伐を祝って――」
「ああ、そう言やあのトリ公、一応フィールドボスだったんだっけか。だとすりゃ、余計にあんなに弱かった理由がわかんね……」
「それは今は置いといて。はい、乾杯」
「あーへいへい、乾杯、っと」
適当な乾杯を済ませ、星が灯り始めた夜空をバックに、私たちは夕食を食べ始めた。
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