Chapter 3. 『世界を変えた人』
Episode 21. Good Bye, Black Cat
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、長い長い台詞を私は言い切った。長すぎて何を言ってるのか自分でもわかんなくなんちゃって、疑問形で終わってしまったけど。
でも言いたいことは言えたような気がする。たとえ私の考えていることが、ちょっと成長しただけでいい気になってるおバカの妄想であっても、独りよがりの偽善であったとしても、少しでも前に進める人がいるのなら、それでいい。ううん、それがいいんだと、自信を持って、そう思える。
隣に座る彼からは、一言も反応が返ってこなかった。笑ってるのか怒ってるのか、それとも呆れてるのか。知りたくて、ゆっくりとそちらを見てみる。
一護さんは、驚いたように目を見開き、パチパチと瞬きを数度繰り返して固まっていた。
平素の彼にはないそのコミカルさはちょっと面白かったけど、それ以上にその驚いたというリアクションに、こっちが驚いた。
「……えっと、一護、さん?」
「え、ああ、わりぃ。ちょっとビックリしちまって……。
いや、なんつーか……戦いたくないとか、死にたくないとか、逃げたいとか、ネガティブなことばっか言うオメーの口から、ああしたい、こうなりたい、なんて前向きな言葉が出てくるなんて、珍しいなと思ってよ」
変わるもんだな、と一護さんは呟いて、表情を元のしかめっ面に戻した。
「なんか、その……良かった。しなくないことしか言わねえお前が、やりたいって思えるモンを見つけられて。
気持ちの在り処とか行動の善し悪しとか、そんなムズカシイことはわかんねえ。けど、サチが自分の意志でこうしたいって思ったんなら、そう思えたんなら、それでいいんじゃねえか? なんか新しいことを始める理由、なんてのはよ」
そう言って、一護さんは私からワインのボトルを取り上げると自分のコップに並々と注ぎ、ついでに私のコップにも注いでくれた。
縁のギリギリまで注がれて揺らぐ紫色の水面は、今の私の心をそのまま映し出しているようで、恥ずかしくなって一気に三分の一くらいを飲み干した。流石に勢いを付けすぎて、ちょっと咽てしまったけど。
なんだか、こう……ズルい。
ズルいよ、一護さんは。
しかめっ面のままだけど、私が精いっぱい頑張って話したら、ちゃんと聞いてくれて。
笑みの一つも浮かべなくても、不器用に私を励ましてくれて。
そんなことされたら……魅かれるに決まってるのに。
嬉しさと同時にこみ上げてきた変な怒りによって、私の中にちょっとした悪戯心が芽吹いた。
前を向いたままの彼の顔を見上げながら、私は人生初の「茶目っ気」を意識しながら、笑いかける。
「そっか。じゃあ私、新しくSSTAのご飯作りも頑張ってみようかな」
「いいんじゃねーの? いっそ食堂でも作っちまえよ」
「うん、それもいいかもね。
頑張って
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