Chapter 3. 『世界を変えた人』
Episode 21. Good Bye, Black Cat
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一護さんの方だったもんね」
死神さん、そう言って、私は空になった一護さんのコップにお代わりのワインを注ぐ。代行だっつの、と彼はぶっきらぼうに言い返しながらワインを受け、ぐいっと一口あおる。
小さく笑みを返して、私も少しだけ長くコップを傾ける。アルコールの一滴も含まれていない「なんちゃってワイン」だけど、なんとなく気分が高揚してくるような気がした。
いつもより高ぶった気持ちのせいか、沈黙の間が一分と続く前に、私は自分から話し出していた。
「あのね、私、SSTAのお仕事を手伝うことにしたんだ。事務仕事をしてくれる人が欲しいって、ディアベルさんが言ってたから」
「黒猫団はどうすんだよ、まさか抜けるってわけにもいかねえだろ。アイツらがゼッテー止めにくる」
「うん、もちろん籍は黒猫団に置いたままだよ。当分の間は、皆はディアベルさんたちの講習を受け続けるみたいだし、私はSSTAのお仕事を覚えながらそのサポートって感じかな」
大変そうだけどね、と付け加えて、私はワインで唇を湿らせる。ブドウの香りが漂い、頭の中が澄んでいくような感覚がした。
吹き抜ける夜風に押されるようにして、自然と次の句が口をついて出る。
「最初はお料理とかお裁縫を覚えて、黒猫団の皆を支えようかなって思ってたんだ。戦い以外で貢献できることなんて、それくらいしか思いつかなかったから。
けどね、あの夜、一護さんが私を叱ってくれて、『信じることから逃げるな』って言ってくれたのを思い出したの。
私は確かに皆を信じることから逃げてた。臆病で弱虫だから、自分の弱い心を見て欲しくなくて、弱い心を誰かに笑われるのが怖くて、本当は寂しいのに誰にも心を許したくなかった。今もまだ少しだけ、壁を作っちゃうときもあるけど、それでもちょっとは良くなったんだ。
この『はじまりの街』でクリアを待ってる人たちの中には、きっと私に似た心を持ってる人もいっぱいいると思う。戦いが、死が、この世界が怖くて、一歩も動けなくなって、全部に目を伏せてる。
もし、そんな人が顔を上げた時、私みたいな弱虫が一歩だけ前に進んで、できないなりに頑張ってたら、きっとその人たちも『自分でもできそう』って感じてくれると思うんだ。ううん、そこまで大袈裟じゃなくても、何かしたいけどどうすればって人とか、戦いはイヤだけど何かサポートならって人とか。そういう人の……えっと、お手本なんて偉そうなことは言えないけど、せめて参考くらいにはなれたらなって、そう考えた。
『信じることから逃げるな』みたいな強い言葉は私には言えないけど、戦えなくてもできることはあるんだよって、伝えたくて。私がそういう人の助けに、ほんのちょっとでもなれたら、いいのかな……?」
今まで国語の朗読以外でやったことがないくらい
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