Chapter 3. 『世界を変えた人』
Episode 21. Good Bye, Black Cat
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で響く喧騒から、私はワインボトルを持ってこっそり抜け出した。皆の高いテンションに少し疲れちゃったのと……いつの間にかいなくなった、彼の姿を探すために。
辺りを見渡すと、彼はすぐに見つかった。金属のコップに注がれた紫の液体をゆっくりと飲みながら、一人で土手に腰掛けている。気だるげに頬杖をついて顔をしかめてるけど、いらいらした空気は感じないから別にご機嫌斜めってわけじゃないみたい。
「……いいの? お料理、なくなっちゃうよ?」
そう声をかけると、一護さんはこっちをチラリとだけ見やった。意志の強いブラウンの瞳が、私を一瞬だけ射抜き、すぐに外れる。
「いいんだよ。もう十分に食ったし、今は食休み中だ……あァ、お前の料理、旨かったぜ」
「ふふっ、ありがと」
お礼を言いながら、一護さんの隣に私も腰を下ろした。そのまま二人で、少しずつ、少しずつワインを飲む。
遠くで皆が騒ぐ声が広い訓練所に木霊して、夜の静けさを掻き消していく。それを聞いていると、小さいころによく行ったお祭りを思い出す。
あの頃もこうやって、皆が騒いでるのを遠くから眺めていた。自分がその輪の中にいることよりも、皆が幸せそうにしてるのを見ている方が、当時の私は好きだった。必要以上に他人と近づくことが苦手な私の、不格好な幸福のカタチ。
今も性根は変わらないけど、あの夜から少しはマシになったかな、とは思う。少なくとも、こうして誰かの隣に自分から座れるくらいには。
でも、まだダメだ。
昨日みたいに、黒猫団の皆が無茶をするのを止められなかった。無事に帰ってきてくれたときはホッとして思わず泣いてしまったけど、その後にこみ上げてきたのは涙じゃなくて、悔恨だった。
私が皆ともっと一緒にいれば、ケイタと一緒に夜の狩りに反対できたんじゃないか。止めることはできなくても、もっと早く皆が迷宮区に行ってしまったことに気づけたんじゃないか。そういうところで頑張るのが、戦線に出ない私の役目なんじゃなかったのか。あるいは、私が戦線から退かなければ、一時でもそれを抑えることができたんじゃ――
「まーだ退いたこと気にしてんのか、オメーはよ」
コツン、と頭に軽い衝撃。一護さんが、コップの縁で小突いてきた。
「別に今回のは誰のせいってワケでもねえよ。強いて言や、ダッカーのアホと、あのクソ犯罪者共が悪いんだ。オメーが気にすることじゃねえ。何でもかんでも自分に押し付けんな、ボケ」
「……凄い、ね。よく分かる。ひょっとして、エスパーさん?」
「バカ言え。昨日の今日でそんなシケた面してりゃ、誰でも予想は付く。マイナス思考はオメーの十八番だしな。
それに、俺がエスパーだってンなら、ウチの相方がカミサマになっちまうだろ」
「そっか、神様は
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