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逆さの砂時計
Side Story
共に在る為に 2
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初は俺の後片付けが無くなったのを不思議に思ってたみたいだけど。
 それも五年の歳月が『当たり前』に変えてくれた。
 仕事はしっかりしてても、男としては最低。
 あいつにとっての俺はそんなもんだろう。

 それはそれで構わないんだ。
 たとえ一生思い出さなくても、あの日約束した事実は変わらない。

「コーネリアは俺のコーネリアで、俺はコーネリアのウェルス、なんだよ。俺からあいつを奪らないで。あいつから俺を奪らないで。どっちが欠けても結局、二人共死んじゃうからさ」

 このままだと、俺は今年中に。コーネリアも来年。
 それぞれ、同い年の異性と結婚するハメになる。
 寝る部屋を分けても感じるほど年々女らしく綺麗に育っていくあの体を、俺以外の男に委ねるかもしれないって想像するだけで……

 ほら。可笑しいくらい、全然、なんにも怖くないんだ。
 実の母親の首に刃を当てて、実の父親を脅迫してるんだぞ?
 なのにちっとも震えないし、後悔とか何それ? って感じ。
 ダメって言われたらきっと、躊躇なく殺すよ。
 変な自信。

「コーネリアの気持ちを(ないがし)ろにするつもりなの!?」
「キモチ? ナイガシロ? 何を言ってんの? 母さん。この村の結婚に、そんなモノ存在してないでしょ」

 十三歳で結婚するのは、この村の常識だ。
 あぶれるのは、たまたま相手が足りてなかった幸運なヤツだけ。
 相手が居るなら押し付け合うのが規則だろ?
 こんなバカげた制度のドコに気持ちとやらがあるのか。
 ぜひとも詳しく教えてもらいたいね。

「コーネリアは俺の一部なんだ。母さん達は、俺を引き裂いて壊すの?」
「ウェルス! アンタはっ……!」

 あぶれるよりも更に幸運な、相思相愛の父さんと母さん。
 同じ年に産まれて良かったね。
 羨ましいよ。
 本当に。

「分かったから、やめろ。村長には俺が話を通してやる」
「ありがとう。その言葉が嘘にならないって、期待しても良いかな?」
「ああ。約束しよう」
「貴方が父親で、俺は嬉しいよ」

 こんなに狂った俺ですら、なんとか護ろうと頭を悩ませる姿は、男として素直に尊敬する。

「ごめんね、母さん」
「ウェルス……っ!」

 解放した途端、母さんはその場で泣き崩れた。

 本当に、ごめんね。
 他のことなら、何でもするよ。
 他人に親孝行だねって誉められるくらいには頑張ってあげる。
 ウチの子にも見習って欲しいもんだって、近所のおばさんに言わせるよ。

 でも、コーネリアだけは絶対に譲らない。
 あいつが『当たり前』に居るのは、俺の隣だけ。
 俺の『当たり前』も、あいつの隣だけなんだ。

 もう二度と、あいつを一人にしない。
 絶対に、
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