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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十二話 新人事
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いかね」
「なるほど。勝ってよし、負けてよしか」
「悪くないな」
低い笑い声が尚書室に流れた。
 
■エーリッヒ・ヴァレンシュタイン

 その日、俺はまた人事局への出頭を命じられた。どうやら俺の処遇が決まったらしい。退職願をだしてから一週間以上が経っている。随分と待たせられた物だが、その程度の重要性しかなかったとも言える。やはり、神経質になっていたのはシュタインホフのようだ。人事局の受付で例の受付嬢に来訪を告げると局長室へ行くようにと言われた。眼には好奇の色がある。多分彼女の中で俺は人事局長の御覚え目出度い将来性豊かな士官になっているのだろう。ま、すぐに自分の過ちに気付く。

「卿の退職願だが、却下された」
やはり駄目か。となると前線勤務だな。イゼルローンではないだろう。となると艦隊勤務だが、さて何処だ? 

「上層部は卿の用兵家としての能力を高く評価している。うらやましい事だな大尉」
「恐縮です、閣下」
少しも信じていないくせに。いつでも代わってやるぞ。

「エーリッヒ・ヴァレンシュタイン大尉、第359遊撃部隊の作戦参謀を命じる。詳細はこの資料に書いてある。武運を祈る」
「そうそう。これはまだ公にはされていないが、イゼルローン要塞司令官、駐留艦隊司令官が交代する。要塞司令官はトーマ・フォン・シュトックハウゼン大将、駐留艦隊司令官はハンス・ディートリヒ・フォン・ゼークト大将だ。お二方とも三長官に呼ばれ、協力して反乱軍に当たれと激励されたらしい」

なるほど。俺の事よりイゼルローンの新人事のほうが大事だ。俺が後回しになるのは当たり前か。むしろ早く決まったほうかもしれない。シュトックハウゼンとゼークトか、最後の要塞司令官と駐留艦隊司令官だな。司令官職の兼任はやはり無理だったか。そっちのほうが効率がいいんだが。しかし三長官の訓示が有ったとなるとどうなるか。さぞかし厳しく協力しろと言ったろう。シュトックハウゼンとゼークトは協力するだろうか? ヤン・ウェンリーのイゼルローン攻略にも影響がある。さて、どうなるやら。
 
ハウプト中将が俺にイゼルローンの新人事を教えてくれたのは、明らかに俺への好意、あるいは憐憫だろう。俺はその情報に気を取られて肝心な事を聞かずに局長室を出てしまった。俺にとって一番大事なことを聞かずに。
第359遊撃部隊って何だ?任務ってなにやるの?

 
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