暁 〜小説投稿サイト〜
101番目の舶ィ語
第一章。千夜一夜物語
第一話。『対抗神話』
[1/7]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「なるほど」

そう答えた一之江は今にも飛びかかりそうな勢いだった。しかし、今の一之江は力を使い果たしている。昨日は『赤マント』であるスナオ・ミレニアムと戦い、、氷澄やそのロアである『ターボロリババァ』のラインと戦ったばかりだからだ。
今は『ロア』状態を解除したから何の怪我を負っていないように見えるのだが、その精神的な疲労やダメージは残っているはずだ。
そんな状態で、仮にも引き分けたスナオと戦えるとは思えないし。
ましてや、最強の『主人公』などと呼ばれる理亜と戦えるなんて思えない。
いや、例え一之江が万全な状態だったとしても、俺は戦ってほしくない。
妹のような存在である理亜と、パートナーの一之江が戦うだなんて。
そんなの、俺にとっては悪夢以外の何ものでもない。

「なあ、一之江……」

「モンジ。貴方の妹さんは我々ロアにとって最も危険な存在です。そして貴方は、そんな最も危険な存在に宣戦布告されました。ここで兄妹だから、などという情で『あいつを殺さないでくれ』なんて私に言い出したら、その瞬間に貴方を殺しますよ」

一之江はまったく俺を見ないまま、そう答える。

「いや、だがな。何も殺しあう必要はないんじゃないか?」

「殺さないで彼女を倒せるなら、私もそう言います。しかし……」

一之江は視線を理亜に向けたまま、言い放つ。

「彼女は私達を本気で消す気でいるのです。甘さは捨てなさい」

一之江は淡々と告げ。

「理亜ちゃん、さっきの話を聞く限り……どんなロアでも消すことができるのよね?」

そんな一之江の後ろから。
音央が鳴央ちゃんを支えたままの姿勢で恐る恐る尋ねる。
音央と理亜は面識がある……だけではなく、多少仲良しだった。
それこそ俺をだしにしてリビングでお茶会をするくらいの仲だったのだ。

「はい。そういう『ロア』としての能力を持っています」

「っ??」

だが、理亜はいつも音央に接するような親しみのある態度を見せなかった。
『俺の物語』である以上、音央も敵として認識している。
そんな態度だ。今の理亜なら音央を容赦なく消し去る……そんなことはしない、なんて言い切れない態度と鋭く細めた瞳で俺や一之江、音央、鳴央を見つめている。
理亜がさっき俺に告げた言葉が脳内でリピートされた。

『いずれ仲間がもっと傷ついたり、命を落としてしまったりした日には、兄さんはぜーったい立ち直れません』

あの言葉は、俺の覚悟を問うものだった。


「で、でも、そんなの……理亜ちゃん、苦しいだけじゃないっ」

音央の語調が強くなる。『ロア』とはいえ、誰かを消す力。
それはある意味殺人を犯すのと同じだからだ。

「そうですね……当然、胸も痛みますし。泣きたくなることもあります」
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ