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101番目の舶ィ語
第一章。千夜一夜物語
第一話。『対抗神話』
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!」

音央の決意に、鳴央ちゃんと俺は断固反対する。

「ロアであるからとか、ハーフロアだからとか、そんなの関係ない。誰かを犠牲にして勝つなんてそんなこと認められない!」

俺は声を張り上げて抗議したが。

『いいでしょう、音央さん。次は貴女です』

俺が音央に言い終わるのと同時に、理亜の声は容赦のない一言を告げた。
そして。


『______妖精の森に攫われた少女が帰ってきた時、そこには暖かな食事と、優しい両親がいました。だから、その少女は______自分が妖精であることを伏せようと思ったのです』


「ひぅっ??」

理亜の声が聞こえたその瞬間。
音央は小さな悲鳴を上げた。




『ですが、その夜ご飯を食べた時。そこにあるのが強い愛であり、そしてその愛は自分に向けられたものではないと知った彼女は、自分の正体を______自分という存在が消えてしまうことも(いと)わずに告げようとしたのです。「すみません、私は______」』



「やっ、あ、あたしの体がっ??」

「いやあっ、音央ちゃんっ??」

音央を見ると、その体が薄っすらと……薄く、透明になり始めていた。
隣にいる鳴央ちゃんが慌てて抱き締めるものの、その体はまるで空気に溶け込むかのように、じわりじわりと色を失っていく。

「や、止めてくれ理亜??」

『兄さん、では、私の物語になる決心をしてくれましたか?』

理亜の声はやはりその続きを語ることはなく、俺に尋ねてきた。いいところで止めることで、その力を見せつけるかのように。
なんて少女だ。
こんな能力、反則なんじゃないか?
理亜が一人いれば、どんなロアだって退治できてしまう。
そのくらい圧倒的な力だ。
まさに一騎当千。
『最強の主人公』にふさわしい能力だ。
それはまるで、物語の『英雄』とか『勇者』が持つ力。
あ、いや。女の子だから、『聖女』や『女神』だな。
俺の『百物語』とはまさしく格が違う。
そう。本当は……本当は、俺なんて要らないんじゃ______。

「も、モンジ……のまれたら……ただじゃおきませんよ……」

(フェンス)の上から聞こえてきた一之江の声にハッとする。
そうだ。俺は一体何の為に。誰の為に『主人公』になったんだ?
何で『百物語』の『主人公』になったんだ?
塞ぎこむ為か?
絶望する為か?
投げ出す為か?
______違うだろ、遠山金次!

大切な物語を……仲間を守る為、その為に俺は『主人公』になったんだ!
何より……俺は『あの日』誓ったんだ。
初めてDフォンで一之江を呼び出した日。
一緒のベッドで添い寝したあの日。
俺は誓ったんだ!

『大事な物語にする為に、頑張る』って……。


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