第一章。千夜一夜物語
第一話。『対抗神話』
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!」
音央の決意に、鳴央ちゃんと俺は断固反対する。
「ロアであるからとか、ハーフロアだからとか、そんなの関係ない。誰かを犠牲にして勝つなんてそんなこと認められない!」
俺は声を張り上げて抗議したが。
『いいでしょう、音央さん。次は貴女です』
俺が音央に言い終わるのと同時に、理亜の声は容赦のない一言を告げた。
そして。
『______妖精の森に攫われた少女が帰ってきた時、そこには暖かな食事と、優しい両親がいました。だから、その少女は______自分が妖精であることを伏せようと思ったのです』
「ひぅっ??」
理亜の声が聞こえたその瞬間。
音央は小さな悲鳴を上げた。
『ですが、その夜ご飯を食べた時。そこにあるのが強い愛であり、そしてその愛は自分に向けられたものではないと知った彼女は、自分の正体を______自分という存在が消えてしまうことも厭わずに告げようとしたのです。「すみません、私は______」』
「やっ、あ、あたしの体がっ??」
「いやあっ、音央ちゃんっ??」
音央を見ると、その体が薄っすらと……薄く、透明になり始めていた。
隣にいる鳴央ちゃんが慌てて抱き締めるものの、その体はまるで空気に溶け込むかのように、じわりじわりと色を失っていく。
「や、止めてくれ理亜??」
『兄さん、では、私の物語になる決心をしてくれましたか?』
理亜の声はやはりその続きを語ることはなく、俺に尋ねてきた。いいところで止めることで、その力を見せつけるかのように。
なんて少女だ。
こんな能力、反則なんじゃないか?
理亜が一人いれば、どんなロアだって退治できてしまう。
そのくらい圧倒的な力だ。
まさに一騎当千。
『最強の主人公』にふさわしい能力だ。
それはまるで、物語の『英雄』とか『勇者』が持つ力。
あ、いや。女の子だから、『聖女』や『女神』だな。
俺の『百物語』とはまさしく格が違う。
そう。本当は……本当は、俺なんて要らないんじゃ______。
「も、モンジ……のまれたら……ただじゃおきませんよ……」
柵の上から聞こえてきた一之江の声にハッとする。
そうだ。俺は一体何の為に。誰の為に『主人公』になったんだ?
何で『百物語』の『主人公』になったんだ?
塞ぎこむ為か?
絶望する為か?
投げ出す為か?
______違うだろ、遠山金次!
大切な物語を……仲間を守る為、その為に俺は『主人公』になったんだ!
何より……俺は『あの日』誓ったんだ。
初めてDフォンで一之江を呼び出した日。
一緒のベッドで添い寝したあの日。
俺は誓ったんだ!
『大事な物語にする為に、頑張る』って……。
武
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