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101番目の舶ィ語
第一章。千夜一夜物語
第一話。『対抗神話』
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音央の言葉で。
理亜からようやく感情というものが読み取れた。
それは『悲しみ』、『後悔』、『怒り』、そして……。

「ですが。私はこの『終わらない(エンドレス)千夜一夜(シェラザード)』の『主人公』としての道を歩み。いくら犠牲が出たとしても、再び立ち上がって戦うという意志があります」

理亜が抑えていた感情。
それは。
『恐怖』。
その感情を理亜が持ち、そして……俺の前に現れたということは。
『最強の主人公』である理亜が恐れるほどの何かが起きている、ということだ。
そして。
その何かが俺に迫っているということでもある。

「っ、理亜ちゃん……」

理亜は苦しそうに声を振るわせてから、目を細めた。
今の言葉は音央への返事でありながら、俺に問い質したものでもあったんだ。

『兄さんには、私のような『覚悟』はありますか?』と。

理亜は俺になんらかの『覚悟』を持って対峙している。
なら、俺も。
『覚悟』を決めて伝えないといけない。

「さて、私の説明は以上でよろしいですか?」

あくまで淡々と。朗々と。女王が民衆に告げるように上から目線と口調で。
理亜は俺と、一之江達を見た。

「では兄さん。改めて言います。私の物語になりなさい」

理亜がその台詞を呟いたのと同時に。

「……すみません、モンジ」

信じられないことに、一之江の口から謝罪の言葉が溢れた。

「え?」

尋ねる間もなく、隣にいた一之江の姿は一瞬で消えた。
その姿を再び捉えた時には、一之江は手にナイフを持ち、それを理亜の胸に突き付けようとしていた。

「ばっ、やめ……」

止めろ、と言おうとしたその時。

「音央ちゃん、今ですっ」

鳴央ちゃんの悲痛な声が横から聞こえ。

「っぐ、ごめんね、理亜ちゃん!」

「音央、鳴央ちゃん??」

『神隠し』コンビが、連携して理亜目掛けて技を放っていた。
まるで、鞭のように、鋭くなった蔦が理亜を拘束しようと迫り、そして、鳴央ちゃんはじっと一之江と音央に合わせようと真面目な顔をして理亜を見つめている。

「モンジさん、ごめんなさいっ。私たちは……!」


『私たちは何があっても貴方を守りたいんです!』

…………。

ああ、解ってる。解ってるよ鳴央ちゃん。だから、そんな目をしなくていいんだ。
そんな目を潤ませて申し訳なさそうな表情をしないでくれ。
君達は、俺の物語だから。俺が下せない決断を、最良の決断を代わりにしてくれたんだ。俺も、みんなも生き残ることが出来る最善の方法を。
だから一之江が珍しく『すみません』なんて言い出し、音央が半べそになってまで攻撃を繰り出し、鳴央ちゃんは悲痛な声で叫んでいるんだろう。
これは、誰の
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