8.提督が怒った理由
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りだ……?!」
ここまで提督が怒りを顕にしたのは初めて見た。襟をねじり上げる提督の右腕にものすごく力がこもっているのは、見ているだけで分かる。声も抑えてはいるが、相手に怒りを伝えるには充分すぎるほど怒気の篭った声だ。
「……?!」
「質問に答えろ! どういうつもりでおれの命令を無視した?!」
木曾は鎮守府内でも比較的練度の高い艦娘だ。その分、死ぬか生きるかの修羅場を何度か経験していて、度胸もついている。その木曾が一瞬で提督の怒気に呑まれた。木曾だけではない。戦艦の榛名と伊勢、空母勢の赤城と鳳翔、駆逐艦の夕立…全員が全員、毎日死と隣り合わせの戦場で戦う戦士だ。私だって、死を覚悟した経験が何度もある。そんな、この場にいる戦いの中に身を置く全員が、またたく間に提督の怒気に呑まれた。それほどまでに、今の提督の怒気はあまりにも突然で強烈だった。
「……おいおい……これはどういう冗談だ?」
「ぁあ?!」
「こっちは難攻不落の敵拠点を制圧して戻ってきたんだぜ? 褒められこそすれ、文句言われる筋合いなんかないはずだ」
木曾は努めて冷静にそう答えたが、声に緊張がこもっているのが分かる。一方の提督の怒りはまったく減速せず、相変わらず怒気の篭った眼差しを木曾からはずさない。
「んなことは見りゃ分かるしとっくに報告受けてる! おれが聞きたいのは、おれの命令を無視して進軍した理由だ!!」
「イケると思ったからだ! 確かにおれと赤城は中破判定だったけどな! 他のみんなはほぼ無傷だった! 敵の編成はすでに偵察で分かってたし、勝つ自信もあった!!」
「だからおれの命令を無視したってのか?!!」
「勝つ自信があれば行くのが俺達だ!!」
この瞬間、提督は木曾を投げた。木曾だって艦娘だし、普通の人間ほどの体重がある。それにも関わらず、提督は木曾の襟口を両手で掴み、そのままドア付近の壁に叩きつけた。先の出撃による連戦で疲れ果てている上、大破状態で体に力が入らないのか、木曾は受け身を取ることも出来ず、壁に叩きつけられたあと、力なくズルズルとその場にへたり込んだ。
一方の提督はまだ止まらない。へたりこんだ木曾の元に歩み寄り、さらに両手で襟を掴んでそのまま無理やり木曾を立ち上がらせた。
「ストップ! テートク!! 木曾は大破判定を受けてるヨ!! それ以上はやめるネ!!」
「そ、そうっぽい…。木曾さんかわいそうっぽい…」
「提督…作戦も成功したんだし、もうその辺で…」
私はもちろん、夕立と鳳翔もなんとか提督を諌めようとするが、提督が落ち着く様子はない。
「大破判定を受けてても木曾はこれぐらいじゃ死なないのはおれが一番よく知ってる」
「わかってるじゃないか提督…だったら俺達の事をもっと信用したらどうだ?」
「
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