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乱世の確率事象改変
魔女の想い
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馬義従の想いを受けて零れた涙は彼のモノ。深く昏い後悔に沈んでしまった彼だけのモノだ。
 同じモノを繰り返してもきっと戻らない。星さんとの再会と同じような白蓮さんとの出会いでは戻れないのではなかろうか。

 多分戻る時は、今のあの人の心が弱った時だ。
 益州を掻き乱す程度じゃなくて……多くの人を虐げる乱世の最中……大きな国に侵略を開始する……裏切りの為には絶好の時機を以って、彼は戻ってくる。そんな確信を私は抱いていた。彼の弱さを見てきたからこそ、そう思えた。
 あの予言のせいだろうか。まるで全てが筋書に乗せられているかのように感じるのは。

 天の御使いなんて、信じられない。
 天の筋書があるのなら、彼はこの乱世をかき乱す最悪の不可測だ。
 曹操軍も、劉備軍も……多くの人間が掻き回されることになる。

 あの人は天じゃない。青空になりたいと望んでも成れない人。

 きっと、昼にも夜にもなれる空。

 私達が見つめてきたあの時間の……



「軍師様よぉ」

 窓の外を見上げる後ろで声が一つ。
 早馬の後、遅れて運ばれてきた傷だらけの第四部隊長さんの太い声が響いた。振り向くことなく背で受け止める。

「えーりんが……言ってたぜ」

 どうにか紡いでいるような弱々しさは、まだ直り切っていない傷を押して出しているのだろう。

「……“御大将”は、必ず帰ってくるんだ」

 少年のように晴れやか。憧憬に溢れ、期待と歓喜を映し出し、部隊長さんは想いを吐き出した。
 直ぐに後、部屋の空気が重く沈む。急な切り替わりが何を意味してかは、分かっている。

「でも……部隊長達にだけ伝えろって……えーりんに言われたことがある」

 重く、冷たく、その声は身に沁み込む。
 事実は残酷だ。彼らにとって、希望に満ち溢れていたはずの可能性は残酷に過ぎた。

「そりゃそうだ。“忘れられない”あの人が、想いを裏切れるはずがねぇ。御大将は、あのバカは、いつか俺達の敵になるんだろ?」

 肯定を求める彼の言は、私の心を悲哀に染め上げる。
 大切な大切な彼らの主は、ずっと予防線を張っていた。

 狂信でありながら狂信に非ず。
 忠義でありながら忠義に非ず。
 疑問と不審を感じたその時は、自らの刃を以って主に向けよ。
 世の平穏を想うなら、己の主さえ踏み潰すべし。

 信じるな、と彼は言う。
 信じてくれと、願いながら。

 哀しい哀しい彼らの在り方は、黒麒麟の裏切りを止める為には最効率だった。

「……はい」
「そうかい……」

 まるで彼のような返答が、私の胸を締め上げた。
 やはり嬉しそうに、彼らはその後に笑うから。

「ははっ……ならよ、許可をくだせぇ」

 彼の代わりに戦う
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