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乱世の確率事象改変
魔女の想い
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は……ずっとマシ。
 あいつの心の芯は、自分で動ける状況にあるからこそ保たれる。それが出来なくなった時、あいつは無力の果てに諦める。
 大人しく諦めて、私の作る平穏の中で溺死しろ。だが、やはり抗う可能性はあるだろう。その時は……

「それでも敗北を理解せずたった一人でこの覇王に抗うその時は、私がこの手で引導を渡してあげる。雛里とあなた達の為に殺してあげましょう。そんな無様な徐公明は……秋斗は見たくないでしょう?」

――私も、見たくない。

 度が過ぎた抵抗は美しさを失う。見るに堪えない。抗う手段を全て奪われながらも、雛里に泣き縋られても抵抗するなんて……想像出来てしまうのが嫌になる。
 明は小さく、御意と口にした。

 それでもやはり……私とは平穏を作らないと決めたなら、あいつは死ぬまで諦めないだろう。

 でも、許さない。許してなんかやらない。この私から逃げられるなんて思わないことね、黒麒麟。
 お前と同じ道化師が私の可愛い子達を変えたのだから……絶対にその責任を取って貰うわ。





 †




 今日もまた夜が来た。
 抜けるような青空が広がっていた今日の空は、夜になれば僅かに雲が湧いて星々を隠してしまった。
 満天の星空が見たかったのに、雲に邪魔された。

 心に広がる不安を表しているようで、私は雲が嫌いになった。
 空のようになりたい、と願った愛しい人。雲も含めて空なのだろうか。私には分からない。でも……どちらかというと彼は、抜けるような青空になりたい人だと思う。
 彼がそんな空だというのなら、それを覆い隠す雲は……嫌い。

 ため息が出た。
 カサリ、と音を立てて机の上の紙を手に取る。華琳様から渡された、益州に居るあの人からの手紙。
 炙りだしで書かれた極秘の手紙には、待ち望んでいたはずの希望の可能性が示されていた。
 “彼”は戻る。間違いなく、私が愛した彼は生きている。

 嬉しかった。読んだ瞬間に涙が零れた程に。
 思い出が溢れて止まらなかった。温もりが思い出されて暖かくなった。

 だというのに……裏切りの確率はほぼ確定だという、絶望も報せの内にあって。
 詠さんの判断なら間違いない。詳しいことは次に会った時に話すと書いてあったから、その時に詳細は聞く。
 つまり、詠さんはまだ戻すべきではないと考えたのだ。絶望の底を覗き込んで、自分の手には負えないと考えた。

 星さんと出会って戻ったなら、白蓮さんと出会えば本当に戻るかもしれない。今のあの人の判断はそう。でも……私は否だと思う。
 今のあの人も強い人だから、白蓮さんと出会っても自分を失うことはない。

 誰も気付いていないけれど、官渡の終わりに彼に戻りかけた事を……私は知っている。
 白
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