魔女の想い
[3/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
現状と方法の詳細説明を見ても、私が取ってもいいと思える手段。部下が策を進言してきたのなら、判断し決断するのは王である私。しかし現在の曹操軍に於いてはそうじゃない。今は……
“部下が策を進言するよりも、部下が出来ると判断した時は私の決断を待たずに実行に移す”
そういった軍になっている。
これは黒麒麟の……否、黒麒麟の身体の在り方と同じだ。
部下達個人の能力を信頼し、決断と協議の時間を省き、“事後報告で足り得る程度”の事柄ならば現場の判断に委ねるべき。
王とは、決断を下すモノ……ではあるが、委細全てに関わっていては本当に大切な問題と向き合う時間が少なくなってしまう。
ただ、あくまで私が能力を見極めた人物に限る。
今までなら自分で全てに関わろうとした。今でも事後の確認は怠らない。でもやはり、あいつが来てから変わったのだろう。
――よきにはからえ……他人に責任を放り投げているようで嫌いな言葉だったけれど、任せたモノと信頼関係が結ばれているのなら、それはどれだけ美しき言葉になるのか。
だからだ、任せてもいいと思えるようになったのは。
あの官渡をあいつと春蘭に任せたのは実験的な意味合いが強く、概ね成功したと言っていい。だから、これからは皆の力量にあった自由を与えようと思った。
差配するのは私。動いてくれるのは彼女達。信賞必罰と確かな絆を以ってして、全ては上手く廻り行く。
是非も無し、とあのバカの判断についての思考に耽りながら、最後の数文を読み連ねる内に私の鼓動が僅かに跳ねる。
先ほどまでの思考が全て、吹き飛ばされた。
「……なんでさ」
同じく、最後についでのように付け足されていたモノを見てだろう。じっと黙って読んでいた明が不満そうに声を出す。
「……一寸だけ黒麒麟に、戻った?」
「『その時の記憶は無いが、えーりんの判断としては間違いないらしい。予想通りにぶっ壊れているようで劉備の元に戻るだろうとのこと。
劉備と直接対峙したのは黒麒麟に一寸戻った一日後だから、今回は黒麒麟が何かをする前に止められた。趙雲と会って効果があったから公孫賛とも会ってみようと思う。それで戻ったとしても可愛いバカ共とえーりんに止めて貰うつもり』……って秋兄、何してんのさ」
苛立たしげに舌打ちをして、彼女はギシリと歯を鳴らした。
「……秋兄の、ばか」
同感だ。私達の手が届かない所で博打は打つなとあれほど言っておいたのに……あのバカは何をしている。
戻るのは安全性が確かめられてからでいい。切片を手に入れたならそれ以上の深入りはするべきではない。戻れるという確証を得たのなら、その成果を持ち帰るべきなのだ。
何より、戻った瞬間の記憶が無いということは……あのバカはもう……
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ