Chapter 3. 『世界を変えた人』
Episode 18. The Advance of Black Cat
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いた。そういう反応をされると、やっぱりもう一時間延長で、と言ってみたくなる。
鬼だ悪魔だと悲鳴が上がりそうな一言を自粛して、既に武装解除して帰路に着こうとしている一護の横に歩み寄る。夕日が眩しいのか、眉間の皺が普段の三割増しで深い。寝ているときでさえ刻まれているこの皺が、彼の顔から消えることはあるのだろうか。
などと考えながら、彼の横顔を何とはなしに見ていると、
「やあ、今日の訓練は終わったみたいだね」
「みんな、お疲れさま」
学舎の方からディアベルとバスケットを持ったサチが歩いてきた。中には入っていた飲み物入りの瓶を、疲れ果てた黒猫団のメンバーに配っていく。一つ一つ手渡す度に女神のように有り難がられて困ったように笑うのが、少し離れたここからでも見えた。それを微笑ましく見守りながら、ディアベルは私たちのところへやって来た。
「一護君、リーナさん。たった今、28層のギミックエリアの踏破状況に関して、新しい情報が入ったよ。
今日の攻略終了時点で、該当エリアに残る未解除の仕掛けは大型の物が四つだけ。おそらく、明日か明後日にでも完全踏破の一報が打たれるだろう、とのことだ」
「そうか。んじゃ、もうアイツらのお守も終わりだな」
「寂しくなる、かい?」
「ねえよ。今生の別れってワケじゃねーんだ。生きてりゃまたそのうち会えんだろ」
「ふむ。つまり君は、また彼らと会ってくれる、もしくは会いたいと思っていると受け取っていいのかな?」
「いいように解釈すんな。可能性はゼロじゃねえってだけの話だ」
フンッ、とそっぽを向いて歩き出す一護を、素直じゃないなあ、と苦笑して見送るディアベル。若手教師同士のようなやり取りを見ながら、私は相方と共に28層の主住区へと帰還すべく、転移門広場へと歩いていった。
◆
転移門を抜けると、辺りはもう薄闇に包まれていた。長閑な28層主住区は、落ち着いた雰囲気がある反面、日が落ちると一気に暗くなる。古びた街灯の灯りは弱くて頼りなく、私たちの足元を朧にしか照らしてくれない。一護の橙の髪の方がよっぽど目立つ。普段悪目立ちするヤンキーヘアーも、こういうときはいいかも、なんて思ってみたりする。
「……テメー、なんか悪意ある目で俺を見てねーか?」
「気のせい」
……意外と鋭い。やっぱり、少なからず気にはしてるみたいだ。
「それより、ご飯にしよ。お腹へった」
「あからさまにはぐらかしやがって……んで? 今日はドコ行くんだよ」
「んー……今日はお魚の気分」
「んじゃあ、22層の湖に飛び込んでこいよ。食い放題だ」
「お断り。私は野生児じゃないの」
「オメーの食欲は完全に野生のモンだろーが」
レベルの低い会話をしながら、私たちはレストラン街へと足を進
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