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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十一話 伝書鳩
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局第一課に戻ると、ディーケン少将がにこやかに話しかけてきた。
「お帰り、ヴァレンシュタイン大尉。遅かったじゃないか」
「申し訳ありません、閣下。少し考え事をしていたものですから。それより何故ご存知なのですか、昇進した事を」
「ハウプト閣下が教えてくださったのだよ、大尉」
「そうでしたか」
それを機に周りから「おめでとう」、「やったな」などの祝福の声が上がる。内心少しも目出度くは無かったが、にこやかに「ありがとう」と返した。引き攣りそうになるのをこらえながら。就業時間を過ぎると、周囲には用事があると言って俺は速攻で帰宅した。今後の事を考えなくてはならない。間違いなく前線に出されるだろう、死ぬ事を期待してだ。
三長官を相手にして味方をしてくれる人間がいればいいが、そんな実力者はちょっと見当たらない。ラインハルトもまだ中佐だ、到底頼りにはならない。となると自力で生き残る道を探さなければならないがどうするか。簡単なのは軍を辞め、弁護士になる事だ。
ラインハルト・フォン・ローエングラムが誕生するまでは政軍官界には近づかない。しかし辞めさせてくれるとも思えない、昇進までさせたのだから。いや辞表を出す事には意味があるかも知れない。こちらには敵対する意思は無い、今回の件は不運な事故だった、本人は三長官を怒らせた事に怯えているというメッセージにはならないだろうか? やってみる価値はある。ディーケン少将とハウプト中将を上手く利用出来ないか?
TV電話が鳴った。出て見るとフェルナーとキスリングだった。ミュラーの奴、話したか。
「エーリッヒ、大丈夫か」
「大丈夫だよ、ギュンター。このとおりまだ生きている」
「馬鹿、冗談言ってる場合か。話はナイトハルトから聞いた。とんでもない事になったな」
「口止めしたんだけどな。彼がそんなに口が軽いとは思わなかった」
「奴を責めるな。悩んだ上で俺たちに相談したんだ」
「でもね、ギュンター、卿は憲兵隊所属だろう。エーレンベルク元帥が動かすとしたら憲兵隊だ。君を苦しめる事になる」
「エーリッヒ、憲兵隊は動いていないぞ」
「ギュンター、それは本当か」
「ああ、間違いない」
「だとすると動いているのは情報部か。何か動きは」
「すまん、それは判らない。うちと情報部は犬猿の仲だからな」
「いや、充分だよ。助かった」
するとそれまで黙っていたフェルナーが話し始めた。
「エーリッヒ、俺のところへ来ないか」
フェルナーは今、ブラウンシュヴァイク公のところにいる。俺にブラウンシュヴァイク公に仕えろというのか?
「卿が貴族が嫌いだというのは判っている。しかしこの場合は生き残る事を優先すべきだろう」
「アントン、卿の親切に感謝するよ。でも私はブラウンシュヴァイク公に仕えるつもりは無い。公
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