5.出発
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ここから提督の生まれ故郷までの行き方をものすごくざっくりと要約すると、まずは船に乗って海を渡り、提督の故郷に一番近い港町を目指す。港町に到着したら次は地元のローカル鉄道に乗って約半日。その後到着した駅からバスに乗って数時間…という具合だった。飛行機という選択肢もあったわけだが、私達艦娘が深海棲艦と必死に戦った結果、こうやってある程度の制海権を取り返すことが出来た実感が欲しくて、私はわざわざ時間が余計にかかる船旅を選んだ。
電算室で青葉に提督の故郷を調べてもらった数日後、私と霧島は艦娘としての任務を終え、人間としての生活をスタートさせた。その日のうちに私たちは海軍が事前に準備してくれていた新しい住居に引っ越しをし、部屋を作り上げて、新生活の準備を整えた。
その後私は、次の日に控えていた提督の生まれ故郷に向かう旅の準備を始めた。と言っても、必要な準備というのがそれほどあるわけでもなく…準備らしい準備といえば、明日着ていく服ぐらいだった。以前に提督から『似合ってる』と褒めてもらえたワンピース。提督の生まれ故郷にはこれを着ていくと、それこそ提督が生きている時から決めていた。今の季節は夏。本当はあの日着ていたアーミージャケットも着て行きたかったのだが、やはり今の季節にアーミージャケットは暑い。彼には申し訳なかったが、アーミージャケットは諦めて、ワンピースだけにすることにした。
港に到着したあと、私はチケットを購入して乗り場に急いだ。購入の際に事務員から身分証明の提示を求められ、先日海軍から支給された『人間としての身分証明』を見せたところ、
「あぁ…元艦娘の方でしたか。海を守っていただいたこと、感謝しております」
と感謝されたのが印象的だった。
「うー…乗り場はドコですカー…分からないデース…水上電探にも感無しデース…」
事務員が教えてくれた通りの場所に来たのに、それらしき船の乗り場はない…すでに艦娘ではないので当たり前だが、水上電探にも感はない。というか私にはすでに水上電探は装備されてないことを今思い出した。そんな基本的なことすら忘れてしまうほど動揺していた時だった。
「金剛お姉様! こっちですよ!!」
なんだか懐かしくて、なんだか頼れる声が聞こえてきた。
「金剛さーん!! こっちこっちー!!」
思春期後期にあたる女子高生の中でも、とりわけ人生を舐めてかかっているタイプ特有のニュアンスの声が聞こえ、この声もまた自分の知り合いの声であることに私は改めて安堵した。声のした方を振り向くとそこには、同じく艦娘をやめた霧島と鈴谷がいた。
「霧島ー! 鈴谷ー! 会いたかったデース!!」
私は二人の元に向かった。自分でも気づかないうちに足早になってしまうほど心細くなっていたことを、私はそ
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