暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
Side Story
共に在る為に
[5/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
、こんな夜中にどこへ行って」
「良いから! この薬草を、あいつにあげて! コーネリアを助けて!」

 夜の林に飛び込んで、滋養に富む薬草を掻き集めた。
 夜は危険な獣が多いとか、枝や葉っぱで体中に傷が付くとか。
 そんなことはどうでもいい。
 コーネリアが居ないとダメなんだ。
 あいつが居ないと、俺は『当たり前』の日常に居られないんだ。
 絶対、失くしたくない!

「コーネリアを助けて! 助けてよ!」
「ウェルス……」

 父さんに頭を撫でられながら、疲れて眠るまで泣き叫び続けた。

 俺はバカだ。
 正真正銘のバカ野郎だ。
 楽な仕事なんか、あるわけがないのに。
 自分の仕事が一番面倒で辛いとか、そんな筈ないのに。
 自分が手を抜いたら、抜いた分は自分以外の誰かがやるんだって。
 どうして、そんな基本的なことも解らなかったんだ!

「ごめん……ごめんな、コーネリア……っ」

 ちゃんとするから。
 俺、これからはちゃんとするって、約束するから。

 お願い、起きて。死なないで。
 俺の傍から居なくならないで……っ!



「あなた! コーネリアが!」

 朝。
 母さんの悲鳴で飛び起きて部屋を覗けば、寝てた筈のあいつが居ない。
 あんなに熱かった体を(うず)めてたベッドなのに、触ると冷たい。
 どこへ……

「そうだ! 昨日、あいつが立ってた場所!」
「ウェルス!?」

 家を飛び出し、村の入り口まで全力で走る。

 ああ、やっぱり居た。
 寝着姿のコーネリアは、湖を。
 その向こうの世界を、村の外へ出るでもなく、ジッと見てる。
 急激な運動と焦りで爆発寸前の心臓を抑えつつ近付いても、反応が無い。
 俺に気付いてないのか?

 ……違う。
 俺を見る気が無いんだ。
 俺でも、俺の両親でもない何かを、こいつはずっと待ってる。
 この場所で待ち続けてる。
 昨日も、多分その前も、その前の前も。
 ずっとここで……

「なにを待ってるんだ?」

 感じたままの問いに、コーネリアは

「わたしのじかんを待ってるの」

 やっぱり、俺を見ようともせずに答えた。

「わたしを作ったじかんを待ってるの」
「…………っ!」

 耳が赤い。まだ熱が下がってないんだ。
 なのに、家を出て。
 こいつは多分、本当の家族を待ってる。
 自分を置いて出ていった母親の帰りを、ここでずっと待ってたんだ。

「お前……」

 俺の家で、俺と同じ部屋で、同じ時間を過ごしてるんだと思ってた。
 けど、違った。

 体を壊すくらい俺達に気を遣って、遠慮して、距離を置いて。
 ……一人……だったのか……?
 一緒に育ったと思ってたお前
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ