暁 〜小説投稿サイト〜
彼に似た星空
4.羊羹
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〜。今日はもう予定もないし、五月雨も飲んでく?」
「美味しいYo! Canもあるヨー!」
「だから羊羹だっつってるでしょ…」
「はい! じゃあいただきます!」

 五月雨の元気のいい返事が終わる前に、提督はすでに席を離れて五月雨の分の緑茶を淹れ始めていた。本来ならそういったことは秘書艦にやらせる仕事なのだが、提督が言うには…

『着任当初は五月雨にやらせてたんだが、五月雨は5回中6回は失敗する。1回で8回分のお茶っ葉を使っちゃうわ、お茶は湯のみに並々と注ぐわ、そのせいで持って来るときにこぼしまくるわ…挙句の果てに必ずこけて執務室がびしょびしょになる』
『だからおれがお茶を淹れるようになった。そしたらクセになっちゃった』

 とのことで、今では五月雨も私も、提督がお茶を淹れてくれることを何とも思わなくなっていた。

「んん〜この羊羹おいしい〜」
「ホントに美味しいデース! 止まらないネー!! 緑茶も美味しいデース!」
「そう言ってくれると準備した甲斐があるってもんさ」
「テートク、ホントにアリガトー!! これからは緑茶も楽しめマース!!」
「そう言ってくれるとホンっトうれしい。おれの乙女心がうずくね」

 気に入った。紅茶とショートブレッドのティータイムに勝るものはないと思っていた私だったが、この事実は素直に認めよう。緑茶と羊羹の組み合わせは、それに匹敵する素晴らしいものだ。今後は、ティータイムのバリエーションの一つとして和も取り入れよう。そして和の時は緑茶と羊羹だ。

「提督! またこの羊羹食べさせてください!!」
「ワタシもまた食べたいデース!!次の機会もよろしくネ!!」

 恐らく五月雨も同じことを考えていたのだろう。こんな美味しいものを食べさせられたら当たり前だが、私と五月雨が口を揃えて羊羹を催促した途端……

「お? お、おう。任せろ…」

 不思議と提督の様子がおかしくなった。なぜか顔が青白くなり、私や五月雨と目を合わせず、冷や汗をかきながら苦笑いをしている。

「oh…テートク、どうしたデスカー?」
「oh…こ、こんごーう? い、一体なにがですかー?」
「提督…なんか言葉遣いが金剛さんみたいになってますよ?」
「さっきのワタシみたいに冷や汗だらだらだし、テートクどうしたんデース?」
「そ、そんなことないでーす。大丈夫でーす……」

 後に、この羊羹は、私のために提督が自分で作ったものだということを知った。私に、紅茶が飲めないストレスを少しでも解消させるべく、彼なりに考えた結果、彼は『羊羹を食べさせることによって、緑茶を好きにさせる』というプランを立てたらしい。

 しかし鎮守府にまだ酒保はなく、周辺に羊羹を売っているような店もなく、まさか司令部に必要備品として羊羹なぞを申請
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