Chapter 3. 『世界を変えた人』
Episode 16. Red Heath after Black Cat
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が原因だろう。
中々帰ってこねえアスナを待ちながら俺たちは無言で食い続け、俺の二割増しの量があったはずのリーナのパスタが俺と同時になくなった時、視界の隅でレストランのドアが開き、一組の男女が入ってきた。片方はさっきまでここにいた女剣士だったが、もう一人の男は新顔だった。
年は二十代半ばってとこか。真紅のローブを羽織り、武器防具の類は一切見えない。身体を上下させず滑るように動く姿は、剣士ってよりは魔法使いって言った方がしっくりきそうな雰囲気だ。銀灰色の髪は長く伸ばされ、背中で一つに束ねられている。
アスナの先導で男がこっちに向かって歩いてきた。それを見た俺は、一瞬だけ、背負った刀の柄に手をやりそうになった。警戒心が湧き上がってくる。
この世界には霊力なんてものは存在しない。だから、俺が幽霊を見ることはねえし、誰かの霊圧を感じることもないはずだ。けど、この男からは、というよりもその目からは、確かに「圧」を感じた。今まで戦ってきた連中の放つ、気を抜いたら気圧されちまいそうな、こっちを殺しにくる重圧とまでは言わない。それでも、コイツは油断ならないヤツだと、俺の感覚が言っていた。隣に座るリーナも、どこか気配が戦闘時のそれに近くなってるように感じる。
やがて、男が俺たちの前に立った。思ったよりも身長が高いそいつの金属を思わせる色の目と見上げた俺の視線が合うが、向こうは全く逸らそうともせず、むしろごく薄くだが、はっきりと笑った。
こっちも視線を逸らさないまま、いつものしかめっ面を保った俺は先手を打って質問を投げる。
「……誰だ、アンタ」
「これは失礼。ボス戦では何度か会っているはずだが、こうして面と向かって話すのは初めてだったね。まずは、正式な自己紹介から始めようか」
穏やかな声で男が喋る。その落ち着きを通り越して超然とした佇まいは、あの大逆の罪人を彷彿とさせる。心の中で警戒レベルを一段階上げた俺を余所に、男は至極落ち着いたテノールでこう続けた。
「私はギルド『血盟騎士団』にて団長を務めるヒースクリフという者だ。『死神代行』一護君、『闘匠』リーナ君、君たち二人を私のギルドに勧誘するために、この席を設けてもらった。こちらの身勝手で申し訳ないが、どうか容赦願いたい」
そう言うと、ヒースクリフはもう一度だけ、その顔に微笑を浮かべた。
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