Chapter 2. 『想う力は鉄より強い』
Episode 14. The dianthus and the deathberry
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従い、その辺に放り投げてあったブランケットを羽織ってココア片手にぬくぬくしていると、一護が手に持っていた情報ペーパーをバサリとテーブルに投げ捨てた。眉間の皺がいつもより深い辺り、なにか気に入らないことでも書いてあったのかもしれない。そう推測しながら、私は身を乗り出して一面の記事を読んでみる。
「――激闘の末の勝利! 攻略組、第19層突破! 立役者は純白の『闘匠』に支えられた橙色の『死神代行』……『闘匠』って、私?」
「オメー以外に誰がいんだよ。ったく、アルゴの奴、また大袈裟に書きたてやがって……」
クソ忌々しい、と呟きながらマグカップを傾ける一護を横目に、私は記事を斜め読みする。
大袈裟と一護は言ったが、要点はしっかり押さえられていた。ボスの第一形態との攻防が順調に進み、突然第二形態に変形して部隊が動揺、しかしそれでも退くことなく全員で戦い、無事勝利した、と。
私の啖呵云々の部分は恥ずかしくて丸々読み飛ばしたが、一面を大きく飾る一護と私のツーショット――宴会で一番人気だったフライドチキンの取り合いに挑む一護と、彼の手にあるチキンに背後からこっそり齧り付く私の、だが――は流石に無視できなかった。いつこんな写真を撮られたのやら。油断も隙もないとはこのことだ。
一護と同じようにペーパーを投げ捨て、三人掛けの大きなソファーに戻る。20層のこの宿に泊まってから一日も経ってないが、この場所が早くも私たちの定位置になりつつある。ピッタリくっつくわけでもなく、さりとて端同士に座るわけでもなく、人一人がギリギリ入れないくらいの、ごく自然な距離だ。
その距離から彼の横顔を見上げながら、私はふとあることを思い出した。
そういえば、あのボス戦で見せた、一護の過剰とも言える動揺の理由をまだ訊いていない。
あの時は「どうでもいい」と言ってしまったし、別にいつか訊こうと決めていたわけではなかったが、「かすれば三割持ってかれる」ヘルネペントとの戦いの中でも迅速な切り換えを見せた彼が、彼処まで乱されたのは何故なのか、それを知りたくないと言えば嘘になる。
でも今は、それを訊くことはないような気がする。
多分それは、一護にとってとても重大なこと。自分から「実はあん時――」なんて言い出せないくらい、重い問題。それを訊ける深さまで、彼の心に立ち入る方法の持ち合わせは、今の私にはない。
だから、待とう。
彼がそれを話してくれるまで。あのしかめっ面が揺らぐくらいに重い事実を、心の底からすくい上げて私に見せてくれるまで。
たとえどれ程の時間がかかろうとも、それまで、私はずっと待つんだ。いくら彼が十八歳だと言っても今の彼は私の『相棒』、気遣いくらいはできなきゃダメだろう。
そう考えた私はその話題を
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