気付く不和の芽、気付かぬ不調
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なんでもないことのように語られた雪蓮の言葉に、祭は言葉を失った。数瞬、拳がギシリと握りしめられる。
「……それが、何を意味しておるのか分かっておるか?」
「ええ、分かってるわ。私達がしたことは袁家と何も変わらないってね」
そんな祭の拳の上に、雪蓮はそっと掌を乗せた。じっと瞳を覗く深い海のような眼の奥底には、冷たい輝きが在った。
「これは数年単位の策じゃないの。
目の前の曹操だけが敵ではなくて、例え盟を結ぶにしても手は打っておかなきゃダメ。おいそれと手を結ぶわけにはいかないでしょう?」
「じゃがそれでは……小蓮様があまりに……」
歯を噛みしめて、苦しそうに言葉を紡いだ。
長く長く人質として暮らしてきた小蓮が、今度は身内の方からそう扱われる。それはなんとも酷であろう、と。
祭の心は哀しみに沈む。
「……小蓮様が敵になるかもしれない、という不振の芽が育ってしまっているのが……蓮華様。
近くに置くよりも距離を置かせた方がいい。他の国に身を置かせて、家族としてではなく客観的に小蓮様を見なければその不振は拭えない」
「そういうことよ、祭。
今は蓮華の立場も難しい時期に入ってる。何時までも孫策ありきの考えで居るようじゃあ孫呉は終わる。不和の可能性なんてもってのほか。だからね……蓮華の心の澱みを少しでも減らす方をとったの。
まあ、小蓮は自分から望んで行った分、私達の狙いや考えを把握してないし、人質のような状態なんていう自覚持たないでしょうけど。さすがに無理に命令しても意味が無かったから今回は助かった」
王としての立場を考えれば、蓮華という後継の成長を考え、不確定要素となり得るモノを遠ざけることは一つの手としてありだろう。
ただし、やはり周りの思惑よりも本人の意思あったから軽く送り出せたとも付け加える。そんな彼女を見て、祭は王の籠に捉われたる三人の少女達の苦悩を想って目を伏せた。
「……雪蓮は其処まで、なんだな。私はもう一つ懸念事項があるからこそ、小蓮様の遠征に許可を出した」
「なんじゃ公瑾、まだあるのか」
「そうなの? 諸葛亮に対するモノ……ってわけじゃなさそうだけど」
考えを巡らせてみるが、いい好敵手のような関係で過ごしていた一人の少女の名を出すくらいしか雪蓮には出来ず、それもあるにはあるが、と唸った後で、冥琳は窓の外に目をやった。
「……諸葛亮は私達の思惑に気付いているさ。あちらとしても願ったり、孫呉の姫君と友好関係はあいつらの理想の一助となるだからな。一番若い姫を出したことで、天下統一を封じる手を幾重も仕掛けてくるだろう。
だが……そんなモノよりも今は崩壊を防ぐ方が大切だった」
「崩壊……とな?」
「ええ。小蓮様と蓮華様の関係の改善は最優先事項。例え劉備の理
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