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緑間が不遇過ぎるから全力で活かしてみた
緑間が不遇過ぎるから全力で活かしてみた
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 高く高く弧を描いた橙色のボールが、寸分違わずリングを通過する。シュートが放たれたのは自陣ゴール下という、少しでもバスケットボールを知る者なら目を疑うような位置。しかしそれが当然であるかのように、シュートを決めた男は喜ぶ様子を微塵も見せずに素早くディフェンスの配置に付いた。

 10年に1人の天才が5人集ったとされる、「キセキの世代」と称されるその1人。それがこの男、緑間真太郎である。もっとも、その評価も既に過去のもの。10年に1人など生温い。特にこの緑間に至っては不世出の才を持つ者とされ、高校1年にして既に、これほどのプレイヤーは未来永劫存在し得ないとまで言われていた。
 それもその筈。味方には余裕を、敵には絶望を齎す彼の者のシュート成功率は、驚愕の100%を誇る。無論それはレイアップの類ではなく、更に言えば最早3ポイントシュートなどというレベルでもない。空恐ろしいことに、緑間のロングシュートはバックコートから放たれる。そんな常識を超えた代物でありながら、絶対に外れないという奇跡を、彼は成していた。
 それ故に最低でも緑間に関してのみ、相手はオールコートで付くことを余儀なくされる。その中でも現在の対戦相手、誠凛はそれが色濃い。打点・軌道共に高いそのシュートに対し、後からブロック可能な火神が緑間に張り付く。誠凛は徹底的な緑間封じを選択していた。
 そしてそれが功を奏したのであろう。最初の10分間、誠凛の火神は緑間に1本のシュートすら許さない。誠凛23点、秀徳16点と、彼らはリードした状態で第1クォーターを終えた。

 状況が変化したのは、第2クォーター。火神1人では負担が大き過ぎたため、現在の緑間のマークは木吉を合わせたダブルチームへと変化している。そんな中、フロントコートに入ろうとしている秀徳の選手へとパスが出された、このプレイによる。
 それを横目に確認した2人は、自陣へ戻るために反転し、走り出した。それも当然であろう。オールコートで緑間に当たっているとはいえ、彼らはゴール下の柱。2人が共に不在の状況では、誠凛のゴール下など高が知れている。何より秀徳には全国屈指のセンターである大坪がおり、他の3人では到底止められない。アウトナンバーを解消するためにも、2人はすぐさま戻る必要があった。
 しかし。そんな考えを嘲笑うかのように、彼らの横をボールが通り過ぎていった。実は先程パスを受けた高尾はそのまま走り込まず、フロントコート手前でボールを受けたのである。
 意表を突いたトリッキーなプレーではあるが、普通ならば意味のない行動としか言いようがない。後方へのパスなど、通常であればロングパスの布石に過ぎない。故にその際は基本的にボールではなく、パスの貰い手をマークすれば済む。つまりディフェンス側は自陣へ戻ることが最善手となり、それが先の展開を不利に
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