Chapter 2. 『想う力は鉄より強い』
Episode 9. Don't judge by appearance
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りーお前が、圏外でわざわざ俺に寄ってくるワケがねえだろ」
「ヒドい言われようだなあ……ま、その通りなんだけど」
「帰れ」
「まあそう言うなって」
飄々としたいつもの表情を浮かべながら、キリトは一枚のウィンドウを開いて俺に見せてきた。マップデータらしく、この迷宮区の地形が表示されていて、その中に紅い点が一つ打たれている。
「知り合いからの目撃情報で、このポイントで黒い外套を着込んだ女性NPCを見掛けたって話がある。ずいぶん前の情報なのに、その後に目撃したって話が出てない。他の目撃者が情報を秘匿してるか提供者が嘘を吐いた、あるいは見間違えた可能性が考えられたが、複数の情報屋を当たっても類似した情報は一つも出て来なかった。最前線に潜るプレイヤー数が少ないとはいえ、ここまで情報の隠ぺいが徹底してるとは思えない」
「んじゃあ、その情報が間違ってんだろ」
「それが、その知り合いは遠距離で撮影結晶を起動して証拠写真を撮って来てるんだ。普段はそんな機転の利く奴じゃないんだけどな、たまたま直前に買ってたのを覚えてたらしい」
これだ、と言ってキリトはさらに一枚のウィンドウを開いた。今度は画像データで、薄暗い遺跡の通路の奥に、確かに黒い外套の女が映っている。海外の彫像を思わせる彫の深い顔立ちに、外套の上からでもわかる起伏に富んだ肢体。腰には刀のものらしき鞘を提げているが、刀身は見当たらない。手に持ってるわけでもなさそうだ。
「コイツが普通にプレイヤーだったんじゃねえの。なんでNPCだって言い切れんだよ」
「消えたからさ、霧のように」
「消えた?」
「そうだ。普通、プレイヤーが消える時には、なんらかのエフェクトが発生するはずなんだ。死ぬときも、転移結晶で移動するときも、フィールドのワープ機能で転移するときも、『隠蔽』で消える時ですらも。けど、そういう現象を提供者は確認出来なかったそうだ。本当に、霧のように消えたと言ってるんだ。となると、そういう消失をプログラムされたNPCだと考えるのが一番自然だろ」
「成程な。んで? それと俺に寄ってきたことの間になんの関係があるんだよ」
「提供者が刀使いだったこと、それからこの写真の女性が刀の鞘らしいものを装備していることから、このNPCの出現には刀使いが必要だと俺はふんでいる。特定の条件を満たした時にNPCが出現するような演出があるってことは――」
「なんかのクエストの開始条件って可能性が高いってことか」
「そういうこと。そして、俺はもう一つ推測している」
細い人差し指をピンと立て、キリトは真剣な表情で続けた。
「このクエストを達成することで、未だ発見されていないボス部屋の入り口、ないしはそこへ続く道が出現する。何の根拠もないが、俺はそう考えてる」
そう、キリトの言うよう
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