Chapter 2. 『想う力は鉄より強い』
Episode 9. Don't judge by appearance
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かねえのか、と逡巡していると、
「実は……その、一振りだけ。ここには並べてないの」
「お、マジか! それを早く言えよ。ひょっとしてアレか? 表にゃ出さねえ『秘蔵の品』ってヤツか? 見せてくれよ。金ならそれなり以上にあるぜ」
「えっと、そういうワケじゃないんだけど……これがそう」
緊張の度合いが増したからか、敬語のはずれた女子店主は少し躊躇しながらウィンドウを開き、ストレージから一振りの刀と取り出してきた。
「……これか」
刀身は肉厚で、重量はかなりのものだ。曲刀の優に三倍はあるように思う。くすんだ鋼の色が重々しい鈍い輝きを放っていた。
だが、最も目立つのは、その造りの粗雑さだ。
『宵刈』と銘打たれたその刀には、鍔がなかった。柄には細い革の帯が巻き付けられているだけだ。柄頭もない。この世界で武器の外見にはプレイヤーは干渉できないらしいから、多分作ったらたまたまこうなっちまったんだろう。
性能を見てみると、これまたアレな感じだった。補正効果なし、筋力要求値は以前少しだけ検討した両手剣並だ。一桁層の武器屋ならいざ知らず、19層相当の武器であればNPC製ですらなにかしらの補正効果がついている。加えて高重量ってことは、片手用武器ならではの利点「取り回しが良い」ってのを潰しにかかっている。
反面、耐久値だけは今まで見た中じゃぶっちぎりで高い。高重量に引きずられてか敏捷性補正もないが、火力は今使ってる『グローアーチ』よりも上だ。
正直、一武器としちゃあビミョーなスペックだ。安定性を求めるなら、さっきの刀の方に軍配が上がる。女子店主が店頭に並べなかったのもう頷ける。
でも、俺はこの不格好な刀に無性に惹かれるものがあった。
俺の持つ斬魄刀・斬月の、マトモに刀の形をしてないとすら言われた一番最初の姿に、どこか似たものを感じたんだ。
「……試しに振ってみてもいいか?」
「え? う、うん。ご自由にどうぞ」
意外なことを聞かれた、という表情を浮かべた女子店主から距離を取り、俺は装備欄を操作して刀を装備する。二度、三度と振ってみるが、曲刀と同じ感覚で振ると重量のせいか斬撃速度は遅い。実戦を重ねて感覚を更新してくしかないか。でもそれ以上に、この掌に吸いつくような感覚とか、空を裂く重々しさとか、数値には現れない「良さ」が伝わってきた。
「……いいな、これ」
「へ?」
「これ売ってくれ。気に入った」
「……え!?」
俺は鞘に納めた刀を突きだし、そう宣言した。
対する女子店主は相当ビックリしたようだった。童顔を驚きの表情のまま数秒硬直させてたが、すぐに慌てたように再起動した。
「で、でもその刀、見た目がちょっと失敗気味で、付加効果もしょぼいし、それに……」
「見た目
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