Chapter 2. 『想う力は鉄より強い』
Episode 9. Don't judge by appearance
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こと言われたって、これっぽっちも嬉しくねーよ」
それに用事のついでに誘っただけだ、とは言わない。約束のことなんざ全く覚えてねえことも言わない。言わない方がいいような気がしたからな。わざわざこの平穏な空気をブチ壊すこともねえだろ。
とっくにペスカトーレを食べきってアイスティー片手に頬杖を突く俺とは対照的に、アルゴは終始ご機嫌のにまにま顔だった。何が楽しいのかはさっぱりだが、さっき運ばれてきた平皿に盛られているスイーツが次々と削り取られていくあたり、とりあえず俺の懸念は杞憂に終わりそうだ。
しっかし、このゲームで会う女連中は皆よく食うな。アレか、仮想世界だといくら食っても太ったりしねえから、タガが外れて健啖家になるってのか。女ってのは色々大変だな。
「にしてモ、『死力』スキル持ってるってことは、ベリっちはあの鬼畜クエをクリアしたってことだよナ。ミスったら即アウトなのに、よくやるゼ」
アルゴの言う「鬼畜クエ」ってのは、『死力』スキルを習得するための専用クエスト『仙人の挑戦』のことだ。三層迷宮区の北部にある洞窟で会える、総隊長の爺さんを彷彿とさせるNPCに話しかけると受注できるんだが、難易度がまさに鬼だった。
やることは超単純、奥の闘技場に連れて行かれ「自分に打ち勝て」とだけ言われて、自分を模した敵に一対一で勝利する、それだけだ。武装に関してはその時の装備と全く同じものを付けてるんだが、そいつのステータスは何とプレイヤーの数値のきっかり二倍。つまり、プレイヤーのレベルが高いほど、敵の相対的な強さも跳ね上がる意味不明仕様ってことだ。結論から言えば俺もリーナも何とか勝利できたんだが、あの時程マジメにレベルを上げてたことを恨んだことはねえな。
「ケド、そのスキルのおかげで今回生き残れたんだシ、良かったジャねーカ。そんな『忌々しいコト思い出したぜ』ってツラするんじゃねえヨ、ベリっち」
「うるせーな。そんな呑気なこと言えるってんならオメーも一回やってこい、そうすりゃイヤでも湿気た面になるからよ」
「それはゴメンだナ。つか、オレっちはそーゆードンパチ系は苦手なんだヨ」
「嘘つけ、ソロで潜れるぐれえには強えんだろ? 毎回情報の裏取りに行ってんだから」
「安全マージンの範囲でならナ。それを超えたトコにはいけねえヨ」
そう言って、アルゴは最後に残ったモンブランを摘まんで口に放り込んだ。指がクリームまみれだが、そういう汚れはどうせシステムが数秒後にデリートしてくれる。でなけりゃ普段散々食い散らかしてるウチの相棒が、食事の度に大変な目に遭うハズだからな。
「……さて、そろそろ俺は行くぜ」
「エー、他人を呼んどいてそれカヨ。それニ、今日はオフなんダロ? もーちょいゆっくりしてけヨー」
「わりーな。俺にも用事って
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