8部分:第八章
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第八章
「有り難う」
「いいさ。それじゃあ俺達も」
「一旦部屋を出てね」
「いや、出ることはないかな」
六郎は少し考えてから述べたのだった。
「別にね」
「ないの?」
「ここにいたままで橋本の奴があいつを連れて来るのを待ってそれから話を聞いてやるふりをすればいいじゃない」
「じゃあ私は向こう側で沙耶が連れて来たあの娘を待って」
「そうしよう」
にこりと笑って理美に告げた。
「それでどうかな」
「そうね」
理美も少し考えてから。そのうえで六郎のその言葉に頷いたのであった。
「それでいいわね。確かに」
「じゃあ決まりだな。もうちょっとしたら位置に移ろう」
「そうしたらいいわね。それにしても」
ここで理美はあらためて六郎に対して言った。その彼を見ながら。
「奈良谷君って」
「俺が?」
「力強いのね」
先程のテーブルの話である。すぐに反対側から来てそのうえで引き戻してそれでバランスを元に戻したからである。それを見ての言葉なのだ。
「案外」
「そうかな」
そう言われても実感がないといった顔で首を捻るだけの彼だった。
「俺は別にそうは」
「けれど有り難う」
「有り難う?」
「だって。助けてくれたじゃない」
だから御礼を言うというのであった。
「助かったわ、本当にね」
「そう。だったら」
六郎はその言葉に頷いた。理美のその言葉が強く心に残った。
それからも用意を続け完全に終わった時だった。それぞれメールを取り出して合図をするのだった。
「よしっ」
「できたわね」
それを受けた卓也と沙耶は会心の笑みを浮かべたのだった。
「それじゃあ後は」
「鉢合わせしないようにして」
今それぞれ貴匡と千里を部屋に連れて来ている。貴匡は部屋の左手にすぐ出る階段を降りていて千里は左手から部屋に向かっている。丁度鉢合わせの状況なのだ。
それでまずは卓也が階段が終わり教室に入る前に。わざと懐からあるものを階段の終わったところに落としてしまったような演技をするのだった。
「あっ」
「どうしたんだ?」
「しまったなあ」
それを落としてしまい参った様な演技をしてみせるのだった。
「これはなあ」
「参ったってどうしたんだよ」
「いや、コイン落としたんだよ」
こう言うのであった。
「コインな」
「コインか」
「ああ、それな」
それを落としてしまったというのである。
「参ったな、本当に」
「それでコイン何処に行ったんだよ」
「あれっ、何処だ?」
早速探しはじめる貴匡だった。
「何処に行ったんだ?」
「ああ、それがな」
卓也は探すふりをする。しかし見つからない。どうしてもだった。
「何処なのか全然わからないな。なくなったか?」
「なくなったら困る
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