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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九話 少尉任官
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トと敵対する事になりかねない。冗談ではなかった。法務局も今は駄目だ。貴族達の横暴が罷り通るこの時代、正義感など出したらクロプシュトック侯事件のミッターマイヤーになる。何処で地雷を踏むかわからない。最後は兵站統括部が駄目なら任官しない、とまで言って押し切った。
「卿らは何処にきまったんだ」
「俺は統帥本部作戦課だ」
とフェルナーが言えば、
「俺たちは宇宙艦隊だ。明後日、宇宙艦隊司令部で配属を言い渡される」
とキスリングが言った。
「これからどうするんだ、エーリッヒ」
「新しい官舎に荷物を運ぶ。その前に両親に卒業の報告をしないと」
「そうか……。どうだ、明日の夜みんなで飯を食わないか。卒業祝いだ」
「いいよ。但し、私は酒は飲めないけど」
「わかっている。後で連絡するよ。じゃ、また」
3人は軽く手を上げて図書室を出て行った。
俺は両親の墓に行く前に、ハインツ・ゲラーの法律事務所に寄った。ゲラー夫妻は何かと俺を気遣い、案じてくれている。出来れば一緒に墓に行きたい。事務所に行くとハインツは俺を奥の応接室へ誘い、エリザベートを呼んだ。
「立派に成ったな、エーリッヒ」
「本当に。昔はあんなに小さかったのに」
「4年だからね。成長期だったし」
喜んでくれるのは判るのだが、どうもこういうのは苦手だ。
「どうだ。うちに来るか」
「少尉に任官したばかりだよ、おじさん」
「でもいずれは弁護士になるのでしょ、エーリッヒ」
「まだ判らないよ、おばさん。忙しいみたいだけど、弁護士は足りているの」
「まあ一応な、足りてはいる。でもコンラートの様にはいかん。お前のお父さんがいればもっと楽が出来るんだが」
「そうね。本当に」
父の死はゲラー夫妻にとっては痛手だったのだろう。友人というだけではなく、パートナーとしても。
「これから父さんと母さんの墓に行こうと思うんだ」
俺がそう言うと、二人は顔を見合わせた。
「エーリッヒ、私たちも一緒に行っていいかい」
「誘いに来たんだよ。おじさん、おばさん」
そう言うと二人は嬉しそうに笑った。
俺はもう一度両親の墓の前で誓った。必ず父と母の無念を晴らすと……。
帝国暦481年
エーリッヒ・ヴァレンシュタイン、士官学校を卒業。
少尉任官、兵站統括部第三局第一課に配属。
帝国暦482年
エーリッヒ・ヴァレンシュタイン、中尉昇進。
帝国暦483年
エーリッヒ・ヴァレンシュタイン、第5次イゼルローン要塞攻防戦における補給任務に功あり。大尉昇進。
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