6部分:第六章
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第六章
「別にな」
「そうなの。別になの」
「ああ、こっちは安心していいよ」
こう述べるのだった。
「別にな」
「そう。じゃあそっちは安心ね」
「いや、安心でもないだろ」
それはすぐに懐疑的に返した六郎だった。
「だってよ、千里ちゃんがそんなのだったら結局同じだろ」
「そうよねえ。結局同じなのよね」
沙耶も六郎のその言葉に頷くしかなかった。
「一方がよくても一方が駄目じゃね」
「どうしよう、それで」
彼等は困った顔になってしまった。四人共である。
「これから」
「こういう場合はまあ。自然にいくとな」
六郎は首を傾げながら述べた。
「あれだろ。悪い方が謝ったら済むんだけれどな」
「だから千里は」
すぐに反論する沙耶であった。
「強情よ。それも今は普段以上に」
「わかってるさ。だから悩んでるんだよ」
「悩んでるのはこっちもよ」
沙耶も同じだというのだった。見ればその眉が顰められている。
「どうしたらいいのかしらね」
「これはだけれど」
しかしここで卓也が言った。
「あいつには悪いけれどさ」
「あいつって?」
「貴匡だよ」
彼だというのである。
「あいつにはな」
「悪いって何でだよ」
六郎は卓也のその言葉に首を傾げさせるしかなかった。
「何を考えてるんだよ、一体」
「ちょっと策をな」
いささか何かの歴史小説みたいな言葉を出してきた卓也だった。
「考えたんだよ」
「策!?」
「ああ、策な」
また言うのだった。
「策を考えてるんだよ」
「策って何なの?」
「こっちもちょっと考えてたけれど」
理美はそのまま問うただけだったが沙耶は違っていた。こう言ってきたのである。
「まあ一応はね」
「それどんなのかな」
卓也は沙耶のその言葉を聞いてすぐに尋ね返した。
「力石さんの考えは」
「まず二人を何処かに連れて行って」
まずはそうするというのである。
「そこでお互いを見えないようにしてね」
「うん、それで」
「そのうえで言わせたらいいのよ」
こう言うのであった。
「謝りたい、それで」
「許したいだよね」
卓也は沙耶のその言葉に合わせてきた。
「そういうことだよね」
「あっ、わかったの」
「俺も同じこと考えたからね」
だからだというのである。彼も同じことを考えていたのである。
「だからなんだよ」
「そうなの。橋本君もだったの」
「そうなんだ。何かあいつを騙すようで悪いなって思ってるけれど」
それでもなのだった。解決する為には、であった。
「それでどうかなってね」
「このままじゃ絶対にお互い謝ったり許したいしないからね」
沙耶は言った。
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