暁 〜小説投稿サイト〜
竜から妖精へ………
第8話 ゼクト vs ミラジェーン
[10/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話



 それと同時に、ミラは膝を付くだけでなく、完全に地面に倒れ込んだのだった。









 倒れていたミラの頭に過ぎっていたのは、《敗北》の二文字だった。

 それも 明らかに相手は全然全力じゃないって感じる。

 なぜなら相手は、攻撃の【こ】の字も使ってないのだ。全部攻撃は自分だけであり、相手は攻撃らしい攻撃なんかない。その上、自分に触れたのは、攻撃でではない。………最後に頭を撫でる様に叩いたあれだけだ。

 こんな、完膚なきまでの敗北は、生まれて初めてだった。

 ギルドでの喧嘩でもそう、勿論、エルザとの喧嘩ででも。初めてだった。

「う……うぅぅ………」

 そして、涙を流すのも初めてのことだ。
 拭っても拭っても、止め処なく、目から流れてくる涙。

「ふぅ……」

 ゼクトは、身体から力を抜いた。集中させた魔力を鎮めていった。どうやら、それに集中していたせいか、ミラが泣いている事に今 初めて気がついた様だ。

「あっ……その、だ、大丈夫…? ひょっとして……痛かった?」

 ゼクトは、慌ててミラに駆け寄って申し訳なさそうに言っていた。
 その姿を見て、言葉を訊いて、ミラは悔しさからか、本当に腹が立った。

「悔しい…悔しいんだよっ! 何よっ……アンタ……攻撃はいっさいしなくてッ。私を嘲笑うようにしてっ……! そ、そんなに、わたし、わたしを、見下したいの……っ」

 ミラは、そう言って泣き続けた。

 これが、八つ当たりだってこと。敗者が何を叫んでも、負け惜しみにしか聞こえないって言うのは、判る。判っている

 ナツだって、何度も私に負けて、色々と騒いでいた。

 その時、自分自身にはそう聞こえていたのだ。いざ、自分の立場になったら、同じように泣き喚く。その自分自身にも腹立たしさをミラは覚えていた。

「……………」

 それを訊いて、ゼクトは、黙った。何も、言えなかった。
 だけど、ミラは止まらなかった。

「なによっ………! な、なんか言ったらどうなのッ!」

 ミラ自身は、言いたくないのに、言ってしまった。全然止まらないのだ。

 涙も、そして口から出る言葉も。
 負けたのは自分なのに、こんなに傲慢で怒鳴り散らすように言ったら、それも勝者にそんな事を言ってしまったら。相手がどう思うかなんかよく判る。自分自身に当てはめたら本当によく判る。


「……ッ!」


 だから、これから、ゼクトに何を言われても、覚悟していた。その言葉に耐えられるかどうか判らないけど、覚悟はしていた。

「……今、オレが何言っても、信じてもらえないかもしれないけど………」

 だけど、帰ってきた言葉は、全く違う種類のものだった。

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ