10部分:第十章
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第十章
「そうだけれど」
「じゃあさ。謝れるわよね」
「悪いって認めて」
「うん」
二人の言葉にこくりと頷く。そうしてその頃。部屋の向かい側では貴匡達が話していた。三人で小声であれこれと話をしているのだった。
「なあ。それでだけれどな」
「どう思うんだよ。それで」
二人はここぞとばかりに貴匡に問う。やはり小声でありそれで以って彼を小声にさせていた。
「千里ちゃんが謝ったらな」
「許せるよな」
「そりゃな」
その言葉には確かに頷くことができた貴匡だった。
「あいつが謝ってきたらな」
「そうだな。できるんだな」
「許せるんだな」
「ああ」
声もまた確かなものだった。やはり頷くのであった。
「俺も。千里がそうしてくれるんなら」
「そうか。ならいいさ」
「それでな」
二人はこう言っていく。そうしてまた壁の向こうでは。千里達が話の大詰めに入っていた。
「じゃあいいのね」
「謝れるのね」
「うん」
二人の言葉にまた頷く千里だった。
「やれるわ。絶対にね」
「そう、わかったわ」
「あんたのその心ね」
二人は千里のその言葉を受けた。そのうえでさらに言ってみせた。
「それじゃあだけれどね」
「練習する?謝ることの」
こう彼女に言うのである。
「ちょうどここにいるの私達だけだし」
「できるかしら」
「練習?」
それを聞いた千里は思わず二人を見てしまった。少しばかり怪訝なものになってしまったその顔で。二人を見てしまったのである。
「練習って?」
「本番になったら謝ることできないわよね」
「だからよ」
だからだというのであった。二人は。
「いいわね、それで」
「ここで練習してみましょう」
また千里に囁く。そっと、わざと優しい声で。
「いいわね。それじゃあ」
「ここでね」
「わかったわ。じゃあ」
二人の言葉を受けてだった。千里は意を決した。そうして言うのだった。
「今ここでね」
「そうよ。ここでね」
「声は大きくしてね」
「ええ」
こくりと頷くとだった。意を決して言った。
「御免なさい」
まずはこう言った。
「貴匡、御免なさい」
部屋全体に聞こえる様な大きな声での言葉だった。
「私が悪かったわ。御免なさい」
「言えたじゃない」
「それでいいのよ」
二人は彼女のその謝罪の言葉を聞いてにこりとした。
そうしてだった。そのうえで。覆いの向こう側に声をかけたのであった。
「聞いた?」
「聞いたわよね」
明るい声であった。それを向こう側にかけたのであった。
「ちゃんと謝ったわよ、千里」
「確かにね」
「よし、じゃあ」
「いいよな」
するとだった。千里にとっては思わぬことに。突然覆いが動いて部屋の向こう側が出て来た。
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