Chapter 1. 『ゲームの中に入ってみたいと思ったことは?』
Episode 4. Crime and Punishment
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変わりはない。だから、リーダーを務めた身としてお礼が言いたかったんだ。本当に、ありがとう。
そして一護君、その剣の腕を見込んで頼みがあるんだ」
「なんだよ」
「ーーオレを、斬ってくれないか?」
「ダメ」
ディアベルの突拍子もない頼みに俺らがリアクションするまえに、横からリーナが割り込んだ。手にはまだヒールピックが握られている。
「圏外でプレイヤーに攻撃すれば、攻撃側は犯罪者、オレンジプレイヤーになって、街に入れなくなる。一護を、ボスを倒した立役者を、そんな身分に落としたいの?」
氷のように冷たい声音で、リーナは淡々と喋る。
「ディアベル、私は貴方が気に入らない。
アイテムをかっさらおうとしたセコさもそうだけど、何より、その行いを死んで償おうと考えるトコが一番気に入らない。誰一人死んでないのに、自責の念一つでポンと捨てられるほど、貴方の命は軽くないでしょ。それに――」
「リーナ、その辺にしとけ」
長文をまくし立てる相棒を、俺は制止した。リーナは剣呑な目付きでキッと睨んでくる。
「ボスを相手に単身特攻なんて無茶をやらかしたバカは黙ってて」
「さっきは立役者って言ってたじゃねえか。誉めるか貶すかどっちかにしろ」
「うるさい、この――」
「……ああ、いや、リーナ君、一護君、済まない。さっきのは冗談だ、せっかく拾った命を捨てるわけにはいかなフゴッ!?」
「「紛らわしい」」
この流れで冗談だとか言い出したバカ野郎の顔面に、俺とリーナのヒールダーツが命中した。クソ、そこそこシリアスな空気で紛らわしい真似しやがって。
「も、申し訳ない。空気を読まなかった。
……だが、それならオレはどうすればいいんだ。
皆を踏み台にして抜け駆けしようとした罪は消えない。そして、罪には罰が必要だ。死がオレへの罰でないとするなら、オレは一体、どうやって皆に償ったらいいんだ……」
今度は真剣だ、そう付け加えてディアベルは肩を落とした。まるで、責められることを望んでいるかのように、力なく弱々しい態度だ。
それは本当に罪人のようでーー俺にはそれが心底気に入らなかった。
俺はツカツカとディアベルに詰め寄り、襟首を掴んで引きずり上げた。
「……死とか罪とか罰とかご大層なこと言ってるけどよ、今のオメーにそんなモンが必要なのかよ」
「……どういう、ことだ」
「さっきリーナが言ったじゃねえか、誰一人死んでねえって。それどころか、オメー以外に誰一人として傷ついてもいねえよ。勝手にしくじった、オメー以外にはな。
所詮そんなもんなんだよ、オメーのやった『罪』ってのは。それを一々大げさに言いやがって鬱陶しい、自責の念で罪を肥大化させてんなよ」
強い口調で、俺はディアベルに続けて言う。
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