暁 〜小説投稿サイト〜
Deathberry and Deathgame
Chapter 1. 『ゲームの中に入ってみたいと思ったことは?』
Episode 2. Spider, Spinner, Sniper
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な登場シーンだったくせに、攻撃パターンはその辺のチビクモと全く一緒だった。別に攻撃がクソ痛いとか、防御が超堅いとか、動きがメッチャ速いとか、そんなことも全くなく、ホントに弱点だったっぽい顔面にひたすら剣先をブチ込んでただけ。経験値はなかなかだったし、もう一回くらいならあの陰気な細道に行ってもいいか、と思える程度には、コスパのいい仕事だった。

 なのに今の俺が普段の三割マシで機嫌が悪いのは、その帰り道に遭遇したヤツが原因だった。

 森の出口近くの木陰から現れたソイツは、猿の顔っぽいのを張り付けた真っ赤な蜂だった。『インフレーマー』という名前のソイツはオレの付く手に飛び出すと、ヒトを小馬鹿にしたガキのような笑い声を上げながら、8の字を描くように旋回し出した。
 ジャマなんでさっさと斬ろうと片手剣を振ったんだが、これが意外と当たらない。先読みしたかのように、紙一重で避けられる。ムキになって全速力で振っても全く当たらず、偶にとんで来る針っぽい攻撃でHPが少しずつ削れていくのが俺の神経を逆なでしまくった。

 なりふりかまわず針ごとヤツを取っ捕まえてブッ刺して倒したころには、俺のHPはなんと半分を斬ろうとしていた。何とかやりきって清々した……のだが、倒したはずなのにリザルト画面には『ヒールダーツ』というアイテムを習得したこと以外書かれてなくて、肝心の「インフレーマーを倒した」の表示が出なかった。何故に、と思った瞬間、視界の外からまた針が飛来するのが見え、俺は咄嗟に跳び退った。
 見ると、木の陰に隠れるようにしてこっちに細い銃身を向ける、二足歩行のウサギの姿。そいつは俺を見ると、可愛らしい面にそぐわない気持ち悪い笑みを浮かべて、森の中に逃げて行った。アレが囮でコッチが本体だと気づいた瞬間には、もうソイツの姿はなく、後にはHPを半減させられたのに得たのが売っても五コルにしかならない投擲型アイテム数個だけの、情けない俺だけが残っていた。

 で、あの後マジになって探し回ったんだが、結局そいつを見つけることはできず、そのイライラを引きずったまま、この会議に来ちまったという感じだった。こんだけイラついたのは久しぶりだ。岩鷲に全力で絡まれた時だって、ここまで頭には来なかったってのに。ヤロウ許さねえ、いつか必ずブッ殺してやる。

 際限なく沸き起こるイライラを何とか鎮めようとしていると、壇上にいた水色の髪の男が手を打ち鳴らした。自然と、参加者の目もそっちにいく。どうもコイツが、今回のボス戦の仕切り役みたいだ。

「よーし、そろそろ組み終わったかな? じゃあ――」
「ちょお待ってんか!」

 何を組んでいたのか知らないが、司会の男が話を始めようとしたとき、いきなり横やりが入った。そっちを見やると、頭にトゲが生えたような髪型のちっさい男がいた。そい
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