Chapter 1. 『ゲームの中に入ってみたいと思ったことは?』
Episode 2. Spider, Spinner, Sniper
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になった、たぶん人間だったモノの残骸だった。首は半ば千切れ、体表は土と血でどす黒く変色し、体中の抉り取られたような傷口からは無数の筋が触手のように飛び出ていた。
いきなり突き付けられたグロ物体に俺が嫌悪を覚えた次の瞬間、メキメキという鈍い音と共に女の身体が膨張した。
ボコボコと泡立つように胴体が膨れ上がり、みるみるうちに元の何倍にも大きくなっていく。槍のように鋭い脚が纏っていたワンピースを次々と突き破り、杭を打ち込むような重々しさで地面に突き立てられた。
巨大な迷彩柄のクモに女の面が張り付いた化け物『ヒュージハインド』は、俺を見て女性の金切声のような奇声を発した。正面に付いた女の顔が、ニタリと歪むのが見える。まるで、これから行う屠殺に愉悦を感じているかのように。
「……こっちに来てだいぶ経ったけどよ、こーゆーのは初じゃねえか? このゲームのジャンルはいつからスプラッターホラーになったんだっつの。あとコイツ、黒く塗ったら完全にヘキサポタスの足八本版じゃねーか。顔面が弱点確定だな」
死神になってから二回目に斬った虚を思い出しつつ、俺はゆっくりと《ホリゾンタル》の構えに剣を持っていく。街の掲示板の情報じゃ、飛びかかりと鋼糸による拘束以外はしてこないらしいが、油断はできない。
確実に一太刀、まずはそっからだ。
「何はともあれ、いきなり胸クソ悪くなるモン見せつけてくれたんだ。報いはキッチリ、受けてもらうぜ!!」
すっかり身に馴染んだソードスキルの発動する感覚を確かめながら、威嚇するように前の二本の脚を振り上げるクモ女目掛けて、俺は真っ直ぐ斬りかかっていった。
◆
このゲームに囚われて一か月間。俺の周りは混乱でいっぱいだった。
あの赤ローブの男こと茅場晶彦によってこのゲームからのログアウトが不可能になり、さらにHPがになった瞬間、強電磁パルスによって現実の自分の脳のHPも0にされるというクソみたいな仕様が適応された。さらに、脱出する術は、このゲームを構成する百のステージにいるボスを倒し、クリアすることのみ、だと言う。
当然、「どーせなんかのイベントだろ」という声が上がったが、その後に渡されたアイテム『手鏡』を確認した途端に、俺たちの身体が初期設定で作ったアバターから現実の肉体そっくりに組み変わったことで、懐疑の声は一瞬にして動揺の色に染まった。今まで操っていたのが偽の身体であったが故に在った余裕は、この変化によって全て消え失せてしまった。
その後は、もう酷かった。悲鳴、怒号が飛び交い、端の方では倒れ込んでそのまま砕け散った奴もいた。それは数日経っても続いて、街中で言い争いして取っ組み合う連中、ひたすら木陰で泣いてる奴、呆然と空を見上げたまま最初の広場から動かない奴
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