7部分:第七章
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第七章
学校内はいつもよりも華やかであった。男組も女組もうきうきとしていてそれでいて不安に満ちていた。同時に不安と同じだけ期待にも満ちていた。
「貰えるかな」
「どうかな」
「俺彼女いるけれど」
「せめて義理チョコ位は欲しいよな」
「そうだよな」
これが男組の意見である。
「やっぱり。そうだよな」
「せめてな」
「彼女いても一個でも多く義理チョコを」
「御前は死ね」
「地獄に落ちろ」
こんな感じであった。男組は極度な緊張の中にあった。
そして女組は。こちらも極度な緊張の中にあったがそれは男組のそれとは違っていた。どういった緊張の中にあったかというと。
「さて、徹夜したからね」
「材料も弾んだし」
「あいつ、見てなさいよ」
「驚かせてやるんだから」
「ハートをゲットよ」
こんな調子であった。狩人の目であった。
「さて、じゃああいつに何時渡すか」
「背中からブスリといっちゃおうかしら」
「この秘密兵器」
「チョコだけじゃないからね」
「見ていなさいよ」
こっちはこっちで独自の世界を形成していた。そうした不穏なものさえ漂う学園内においてである。冴子は今送り迎えの車から降り立った。その手には。
その手にあるものを見た学園の皆は。まずは唖然となった。
「薔薇!?」
「バレンタインに!?」
その手には薔薇の花束があったのである。白い包装に覆われた見事な多くの薔薇がである。それが彼女の手の中にあったのである。
しかもである。その薔薇が。
「ええと、赤じゃないわよね」
「っていうかあの色って」
「そうよね」
見ればであった。その薔薇の色は。
「黒・・・・・・」
「黒薔薇って・・・・・・」
「あれ何!?」
皆それを見て唖然とする他なかった。
「黒薔薇をバレンタインにって」
「何なのかしら」
「ヨーロッパじゃそういう風習あるの?」
「さあ」
誰もそれは知らなかった。
これが女組の反応であった。そして男組はというと。
「黒薔薇をプレゼントって」
「違うよな」
「今日バレンタインだよな」
「ああ、間違いない」
日付を確認する人間までいた。
「二月十四日な」
「それで黒薔薇か」
「何か違わないか?」
「いや、全然違うだろ」
「そうだよな」
こんな話をするのだった。とにかく今の冴子の行動は全く意味不明なものであった。そうしてその黒薔薇を持って学校の中に入ってである。
優しげな目をしたやや大きめの鼻の明るい顔立ちに茶色の髪を左右ではねさせた男子生徒のところまで行く。彼がその晴彦である。その彼のところまで来たのである。
その黒薔薇を見て彼は。まずはその目を大きく見開いた。
「えっ、何これ」
「バレンタインでしてよ」
その薔薇の
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