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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七話 出会い 
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裟だな、ミュラー」
「大袈裟じゃない。いいか、まず最初に俺たちは正規の入学生だ。そしてヴァレンシュタインは編入生。次に俺たちは16歳でヴァレンシュタインは12歳。それから俺たちよりヴァレンシュタインの方が成績がいい。これだけ揃ってたら俺たち三人が嫉妬から体の小さいヴァレンシュタインを取り囲んで侮辱したって事になってもおかしくないんだよ」
ましてフェルナーは教官から睨まれているとは言わないが目を付けられているのは事実だ。
「……やばかったなあ」

俺たち三人は揃ってため息をついた。危なかったと思う。士官学校には正規入学者と編入者がいる。この両者の溝は決して小さくは無い。半年の差というのはそれなりにあるのだ。しかしそれをもって編入者を侮辱することは許されない。士官候補生とはいえ、軍人なのだ。

軍に属する人間が国家の制度を侮辱するようなことがあってはならない。それが原因で「繰上げ卒業制度」、「編入制度」が崩れたらどうなるか。この制度の恩恵を受けているのは何よりも軍なのだ。当然軍は侮辱するような行動を取ったものを許さないだろう。既に軍内部では編入生は優秀だというのは常識になりつつある。もっともそれが正規入学者と編入者の軋轢の一因になっているのだが。そんなことを考えていると、キスリングがおずおずと話しかけてきた。

「なあ、フェルナー。ヴァレンシュタイン弁護士というのはそんなに有名なのか」
「ヴァレンシュタイン弁護士がいなければ、リメス男爵は謀殺され、リメス男爵家の財産は親族たちで奪い合いになったろう。オーディンの社交界では皆そう言ってヴァレンシュタイン弁護士を賛美している。当然軍でも知っている人間は多いだろうな」
俺たちはまた三人揃ってため息をついた。

「なあミュラー、明日会うのか」
「ああ、せっかく向こうが指定してくれたんだ。会うつもりだ」
そうか、と小さな声でつぶやくと、少し戸惑いながらフェルナーが話し始めた。
「実はな、これは先日ある筋から聞いたんだが、エーリッヒ・ヴァレンシュタインが士官学校に入ったのは、暗殺から身を守るためだという噂がある」

俺とキスリングは顔を見合わせた。暗殺?どういうことだ。
「親だけでなく子供も殺そうというのか。酷い連中だな」
キスリングは吐き捨てるように言った。俺も同感だ。
「碌な死に方はせんだろう」
「リメス男爵家が爵位と財産を返上したとき、現金が妙に少なかったらしい。財務省の人間が少なすぎると言っていたそうだ」
「少ないってどれぐらいだ」

貴族の少ないって言うのはどのくらいなのだろう。俺はそんなことを考えながら問いかけた。
「ざっと200万から300万帝国マルクは少なかったそうだ」
「200万から300万、おいそれ本当か」
あえぎながらキスリングが問う。
「何処ま
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