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至誠一貫
第一部
第二章 〜幽州戦記〜
七 〜酒宴〜
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 翌朝。
 私は愛紗を連れ、董卓の陣へと向かった。

「まだ、ご主人様が私の中におられるようで……」

 ふむ、かなり歩き辛そうだ。
「無理をするな。返事をするだけなのだから、私だけでも良い」
「いえ、これしきの事でご主人様のそばを離れる訳には参りませぬ。それに、董卓という人物も見ておきたいのです」
「そうか。だが、董卓の前でその歩き方は好ましくないぞ?」
「それは、何とか致します。ご懸念には及びません」

 愛紗は、変わろうとしている。
 ならば、無理に押しとどめる事もあるまい。

「それならいい。行くぞ」
「はっ!」

 ……だいぶ、硬さが取れてきたやも知れぬ、な。



「おはようございます、土方さん」
「はっ。董卓殿にも、お変わりなく」

 今日は、見慣れぬ将も一人、加わっていた。
 張遼とは違うが、胸当てと腰周りだけの鎧という出で立ち。
 本人にそのつもりがあるのかどうかは知らぬが、何とも扇情的ではある。
 鋭い目つきと華奢な体格に似合わぬ大きな斧が、只者でない事を物語っている。
 皆そういう訳ではないのかも知れぬが、どうやらこの世界は女子(おなご)が上に立つのが当たり前らしい。
 ……さぞや私は奇異に映る事であろうな。
 そんな私の思いを悟ったのか、当人が名乗った。

「私は董卓麾下の将、華雄だ」

 華雄?
 咄嗟に、私は愛紗の顔を見た。

「ご主人様? 私の顔に、何か?」
「……いや」

 ……ふむ、あの華雄か。
 しかし、因果なものだ。
 いずれ、遣り合うやも知れぬ二人が、こんな形で対面する事になるとはな。

「私は関羽、字を雲長と申します。よろしくお願い致します」

 凛としていて、それでいて硬さを感じさせない挨拶だ。
 確実に、良い傾向が出ていると言えるな。

「はい、こちらこそ」

 それから、董卓は私を見据える。

「それで、土方さん。お返事の方をお聞かせ願えますか?」
「はい。董卓殿の申し出、お受け致す」

 そう答えると、董卓は柔らかな笑みを浮かべる。

「そうですか。ありがとうございます」
「いや、お礼を述べるのは拙者の方でござる。よしなに、お頼み申す」
「それで、糧秣の方だけど。ボク達で一旦、預かる形にさせて貰うわ」
「うむ、それで結構。昨日参った郭嘉が量を確かめております故、打ち合わせを願いたい」
「わかったわ。兵の方は、霞と華雄で協力して」
「よっしゃ。ほな、この後で土方はんの陣に邪魔するわ」
「わかった」

 張遼は一軍の将として、風格を漂わせている。
 愛紗達も、きっと得るところが大きいだろう。

「では、細かい事は追々詰めていくとして。一度、軍議を開きたいと思います。如何でしょ
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