カイソウ――ダカラ、彼女ハ生キレタ
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も簡単に殺してしまえるだろう。
幼い彼の姿からも、それは容易に想像が出来た。
「要くんがわたしを殺してくれる……」
そう思えた。
その瞬間から、生きることに対する不安がなくなった。
この世界には、無敵のヒーローがいる。
どんな強大な敵が現れても、わたしがどんなに強大な敵になったとしても。
きっと彼なら、人々を守ってくれるだろう。
きっと彼なら、わたしを殺してみせてくれるだろう。
「すごい。要くんはすごい」
その時から、要くんはわたしのヒーローになった。
破壊衝動を抑えきれなくなったその時には、要くんが殺してくれる。
たったそれだけのことで、わたしは生きるのが何一つ怖くなくなった。
精一杯に生きよう。
今を楽しんで生きてやる。
そして自分自身の破壊衝動を抑えきれなくなったその時は――。
心まで怪人になってしまったその時は――。
「――要くんに、殺してもらえる」
要くんは、ずっとわたしのヒーローだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
幾子の口から、莉子の過去が告げられる。
要はただ黙って聞いていた。
「……以上だよ。気に障ったかい?」
「障ったよ。……何勝手なことをしているんだよ、無責任な……」
「はは。よく言われるよ昔から。君を身ごもった時も、おばあちゃんから『無責任だ』と叱られたもんさ。結婚していなかったからね」
幾子が頬を掻く。
「説明はしたよ。それで要はどうする? 結局、全部を知ったって後味が悪くなるだけだっただろう? だって今の君は、変身して戦うことが出来ないんだから」
幾子が立ち上がる。
「莉子くんは街の駅周辺に留まっているらしい。わたしは明日の朝には仲間と合流して彼女の暴走を止めに行く。連れ去られたっていう里里くんのことは任せておきたまえ。必ず助けてみせよう」
幾子の口から、莉子の安否を保証する言葉は出てこない。
それもそうだろう。必要があれば、彼女は殺さなければならない。
だって彼女は怪人なのだから。
『殺してもらうこと』これは他でもない彼女自身の願いでもあった。
きっと今日まで要に彼女が関わってきたのも、頑なに要をヒーローにしようとしていたのも、要自身に殺してもらうためだったのだろう。
騙されていたわけではない。でも、利用されていた。
その感覚が拭い切れない。
要は怒りに拳を握った。
「じゃあ、僕は行くよ。もうすぐここにも避難勧告が出されるはずだから。臨機応変に対処するように。それじゃあ、いってくるね」
それだけ言い残し、幾子は居なくなった。
暫くすると、街中に警報のベルが鳴った。
日が沈む頃には、街から人の姿は
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