カイソウ――ダカラ、彼女ハ生キレタ
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しまった。
本気で彼女を壊そうとする度に、わたしの中の破壊衝動は少しだけ小さくなる。
壊せという声が遠くなる。
そして、わたし達は朝日が登るまで戦い続けた。
幾子さんがわたしの衝動を一身に受けてくれたおかげで。わたしは怪人の姿から元の人の姿に戻れるぐらいに冷静さを取り戻していた。
皮膚を突き破って生えていた触手が塵となって消えていく。
わたしは再び人の姿に戻った。
「お終いかい? あー……お腹すいた……」
幾子さんがその場に座り込む。
防御に徹していたにも関わらず、彼女の体は傷だらけだった。
「怪人が人の姿に戻ることがあるとは聞いていたけれど、実際に見るのは初めてだよ。気分はどうだい?」
わたしは、彼女の言葉は聞かずに足下の割れたガラスを拾い上げた。
鋭利な面を首筋に当てる。
「ふっ……」
息を吸い込んで、ガラスを滑らせた。
しかし、幾子さんの手が伸びてきてわたしの手を掴んだ。
わたしの自害は失敗に終わった。
「……どうしてそんなことをするんだい? 何か気に障ったかい?」
「死なせてよ……」
「死のうとしていたのかい? そんな震えている手では、痛い思いをするだけだよ」
「だったら、あなたが殺してよ!」
わたしは泣いて喚き散らした。
怪人は、故意に人を襲うのではない。意思とは関係なく胸の奥から湧き上がる破壊衝動によって、意思とは関係なく破壊を繰り返してしまう。
「わたしが生きていたら、絶対に誰かが死んでしまう……わたしが殺してしまう……」
「今の君は落ち着いているじゃないか。それでも、死なないといけないのかい?」
いつ自分が破壊衝動に飲まれてしまうかわからないんだ。
「生きるなんて出来るわけない……」
わたしが本気を抑えられなくなれば、幾子さんだってかなわないだろう。
そうなったら誰がわたしを止めてくれるのだろうか。
止められるのだろうか。
わたしは自分が怪人であることを悲観し、破壊衝動に飲まれ大切な人を傷付けてしまう前に自害を決意するが、死への恐怖から死ねなかった。
だから幾子さんに「殺して欲しい」と何度も懇願した。
「怪人が相手ならともかく、泣いている子供は殺せないよ」
なのに幾子さんは困った顔で笑ってそんなそんなことを言う。
無責任な人だと思った。
だけど、幾子さんはわたしに希望を与えてくれた。
「うちの息子がね、ちょうど君と同じぐらいの歳になるんだけれど……」
その日、わたしは紫雲 要(シウン カナメ)を生まれて初めて見た。
「すごい……」
要くんは凄かった。
本当に強かった。
彼がヒーローになれば、どんな怪人も敵わない。どんな相手が現れても、例え本気のわたしが相手でも要くんなら意図
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