オデカケ――英雄ノ休日
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カップル、みたいな目で店員が二人の顔を交互に見比べた。
元のカジュアルな服に着替えた莉子が更衣室から出てくる。
袋に入れられた白のワンピースを受け取って、るんるんとした足取りで再びショッピングモールの中を回り始める。
家具を見て。そうこうしている内にいい時間になったので、映画館へ。
余裕を持って指定された座席に着く。
そして映画が始まった。
「アニメやね……」
「アニメ映画ですね……」
二人が選んだのは、全年齢対象のアニメ映画だった。
小麦粉で出来たヒーローのウドン☆マンが、その腰の強さを武器に子供を助けたり、野球選手として名を馳せたり、悪と戦ったりする話だ。
映画が終わる。
最初は子供向けのアニメ映画とあなどっていたが、内容はウドンマンの成長と挫折を描いた深い物語で、はっきり言って面白かった。
「おふっ、うううっ……」
一緒に観ていた莉子に至っては、感動で号泣している。
こんな莉子を連れたまま歩くわけにもいかないので、要と莉子はそのまま近くのベンチに腰掛けた。
「大丈夫ですか……? 何か飲み物でも買ってきましょうか?」
ハンカチを渡すと、莉子はそれで目元を抑えた。
「マスカラが、目に、入って痛い」
「洗ってきますか?」
コクリ。と頷いた莉子がトイレに消えていく。
携帯で時間を見ると、お昼時を少し過ぎていた。
「何だか、こうして遊ぶのも久しぶりだな……」
要は莉子が帰ってくるのを待ちながら、ゆっくりと流れていく時間の中に溶けこみ始めていた。
ジィリリリリリリリリリリリリリリリリリリッ――――
突然、館内に警報音が鳴り響いた。
賑わいの音が一瞬で消えていく。
静まり返った館内に、館内放送が鳴り響いた。
『怪人警報、怪人警報――』
怪人警報。この付近に、怪人が出現したことを知らせる警報だ。
『ショッピングモール北側、電気店の店舗付近にて、怪人が『変態』しました』
同じ言葉を二度述べる。
『館内にいる皆様は、係員の指示に従って速やかに避難して下さい。繰り返します……』
放送が終わると、館内が一瞬静まり返る。
係員が大声を上げて、来場客を安全な方へと誘導し始めた。
誘導に従う人々には、焦りの色はない。
それというのも怪人は、人の姿から怪人の姿に『変態』することによって出現するのだが、『変態』したばかりの怪人は行動が安定しない。生まれたての子供のように。しばらくまともに動くことが出来ない者も多い。
海でサメの背びれが見えたような物だ。危険はあるが、落ち着いて離れさえすれば、襲われる危険は少ない。
勿論、相手は怪人だ。
甘く観ていてはいけないが、必要以上に怯える必
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