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ウラギリモノの英雄譚
ステミ――莉子ノ二次試験
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 市立総合体育館第一競技場(しりつそうごうたいいくかんだいいちきょうぎじょう)
 県下最大規模のこの体育館で、本年度のヒーロー認定試験(にんていしけん)二次試験は行われる。

 (カナメ)正宗(マサムネ)は、会場前で待ち合わせをして、合流したところだった。

「まだ開場まで時間があるな……うどんでも食べに行くか?」
「良いけど……ねぇ、正宗」
「ん?」
「気合入れ過ぎじゃない?」
「何が?」
「服だよ」
「ああ。だってデートなんだぜ。気は抜けないだろ?」
 本日の正宗は(えり)付きのシャツにジャケットを羽織ったお兄系のコーデでやって来た。
 羽織ったジャケットは遠目にも上質な質感なことが分かるぐらいの光沢を帯びている。いったいいくらするのかは検討もつかないが、お高いのだろう。
 更に正宗は、元々茶色がかっていた髪の毛に、やけに明るい茶色のメッシュを入れてきていた。
 なんでも、わざわざ昨日美容院に行って染めてきたらしい。
染髪(せんぱつ)は校則違反だろ。月曜までに染め直すの?」
「色のついた部分は、後で切るんだ」
 正宗は言い切った。
「確認するけど、今日は僕と出掛ける予定だったんだよね?」
「おう。今日は野郎二人で楽しもうぜ!」
「男友達と出かけるのに、どれだけ気合を入れているんだよ!」
「…………確かに。男相手にここまでするのは変だよな……」
 要のツッコミに、正臣は唇に手を当てて考えこむ素振りを見せた。
「……俺さ。たまに要の中性的な顔立ちが可愛いなぁーと思うことがあるんだよな」
「どういうことだよ!」
「とりあえず、うどん食いに行こうぜ」
「待て。正宗! さっきの発言は何だ。聞き捨てならないぞ!」
「はははー」
 要は、今日一日正宗と過ごすことが、少しだけ怖くなった。



 正宗に付き合ってうどんを食った後、二人は会場に戻った。
 会場内に入ると、既に観客席がまばらに埋まっていた。
「もうすぐ試合が始まるのに、人が少ないな」
「二次試験は毎回こんなものだよ。最終試験はかなりの人が来るけどね」
「前に要が試験を受けた時は、歩く道も無いぐらいに混んでなかったか?」
「あれは……たまたまかな」
「ふーん、たまたまねぇ」

 そうこうしている間に、開始式が始まった。
 入場した選手達の前で、スーツを着た初老の男が簡単な挨拶をし、試験が始まる。

 ヒーロー認定試験の二次試験は主に変身前の格闘技の技量を測る試験だ。
 演舞と試合の二部構成で試験を行い、格闘技の有識者や現役のプロヒーローなどが各々の主観で評価をする。

 まずは演舞の試験が始まった。
 志願者一人一人が前に出て、
 志願者達は、技術を誇示(こじ)するように、各々が体得している格闘技の型を
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