ステミ――莉子ノ二次試験
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歩引き、蹴りを躱す。そして一歩踏み込む。
男が低めの正拳突きを放った。
「くぅっ……」
腹部に左拳を受けて莉子がふらつく。
もう立っているのもやっとなのだろう。
男から莉子の傷を按じている様子が見て取れる。
恐らく男は早急にこの試験を終わらせるつもりなのだろう。
「今度こそ、終わりだ……」
要が呟く。
男が引いた右拳で、渾身の正拳突きを打ち込んだ。
「っ……」
誰もが息を呑んで試合を見守っていた。
目を剥いたのは、拳を打ち込んだ男の方だった。
「へっ」
莉子が笑う。
体勢をわざと崩した莉子は、肩を狙って放たれた拳を顔面で受け止めた。
莉子の血が床に飛び散る。動揺した男に、隙が生まれる。
莉子はその隙を逃さなかった。
打ち込まれた腕を掴み、飛び上がって三角絞めを仕掛けた。
「ぬっ!」
片腕で莉子の体重を支えられずに、男が前のめりになる。
莉子は男の首に足を絡め、男の頸動脈を締めあげた。
「んぐぅっ……」
男が呻き声を上げる。
莉子を振り払おうと力を込めるが、ガッチリと張り付いた莉子は、男の腕の力だけではびくともしなかった。
一(1).二(2).三(3)……。
時間が流れ、そして……。
「かはっ……」
男の意識が落ちた。
「よっと……」
莉子が男から離れる。
男が床に崩れ落ち、自らの血を拭った莉子がノソノソと立ち上がった。
そして要達が居る方にVサインを向け。
「勝ったー!」
と、満面の笑みで宣言した。
「…………」
絶句する会場内。
倒れた男はものの数秒で意識を取り戻した。
駆け寄ってきた係員に、「大丈夫だ」とジェスチャーし起き上がる。ずんずんと足を踏み鳴らして莉子に詰め寄っていく。
「娘が顔に傷なんか作るもんじゃない。今直ぐ治療に行きなさい」
そう言い残して、男は控えに下がって行った。
莉子は治療に向かう。
その後の試験は、滞り無く進んでいった。
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