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ウラギリモノの英雄譚
ステミ――莉子ノ二次試験
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な力の差と考えていい。
 自分よりも重量がある相手と戦う場合、殴り合いなら手数で押す、投げ合いなら技数で崩す等の工夫が必要になってくる。
 つまり莉子がこの相手に勝つためには、力比べをせずに相手を攻撃しないといけない。
 だからこそ、男は莉子の行動を読みやすくなる。

 手数と技で莉子が男を崩しにかかる。
 男は防御に徹しつつ、隙を突くように拳を繰り出してくる。
「くぅっ」
 莉子の攻撃は殆ど男に防がれていた。しかし、男の攻撃は一発一発が莉子の足、腹部をえぐっている。
「なかなかやるね」
 そう言って、男の手が莉子のジャージの襟を掴んだ。
 そして男が大外刈(おおそとがり)で莉子の足を払った。

「さっきから柔道技しか使ってないじゃないか……」
 空手を使う試験官じゃなかったのかよ。と、要が呟く。
 決着だ。莉子の体が浮いた瞬間に、要はそう判断した。
 ほぼ間違いなく、莉子が倒された後に試験終了が告げられるだろう。

 結局、莉子の『倒す』という宣言は果たされなかった。
 相手が悪かったのだ。それは仕方がない。
 だが、技量の高さは十分アピールできただろう。おそらく彼女は合格だ。

 そう思い、要がプログラムに目を落としかけた。
 その時――。
「ダンッ――」
 莉子の体が地面に落ちる音。
 会場全体が凍りついた。

「このっ……」
 莉子に挑発されても笑って流していた男が、怒りに顔を歪めた。
「何をしておるか、このバカタレがァァァ!」
 男の怒声が会場に響き渡る。

 男に投げられ、地面に落下した莉子は、莉子が怪我をしないように、彼女の上半身を引き上げようとした男の手を振り払い、あろうことか受け身も取らずに頭から叩き付けられにいった。
 勿論、彼女の技量であれば受け身を取ることも、出来るだけ怪我をしないように投げられることも容易く出来ただろう。
 だが、彼女はあえて怪我をしにいった。

 会場全体が息を呑む。
 頭を打ったにもかかわらず、莉子は即座に床を転がり、起き上がった。
 打ち付けた顔面に、真っ赤な血が流れる。
「おい。あの試験官、ちょっとやり過ぎじゃないか?」
「試験官のせいじゃない。今のは彼女がわざと頭から落ちたんだ」
「何でそんなことをするんだよ?」
「相手の押さえ込みを(かわ)すためかな。身動きが取れなくなったら試験終了だからね。……でも、あれは完全に悪手だ」
 打ち所が悪ければ莉子は死んでいたかもしれない。
 たかだか試験に、彼女がこれだけ体を張る意味なんてないはずだ。
「何を考えてるんだ……?」

「誰か、タンカを持って来て!」
 男が莉子から目をそらさないまま、場外の係員に声を飛ばす。
 莉子は男に中段の蹴りを見舞った。

 男は一
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