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ウラギリモノの英雄譚
テイアン――緋山莉子トノ遭遇
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二次試験も合格してない」
 ヒーローでもない人間に弟子入りを求められることは生まれて初めてだった。
「ヒーローでもなければ高校生でもない。中卒の女の子」
「高校生でもないの? じゃあ、その制服は?」
 彼女は要と同じ英名高校(えいめいこうこう)の制服を着ている。
「要くんと同じ学校に通っている気分を味わいたくて、制服だけ買うたんよ」
 ストーカーか!
「いや、何で離れていくん? ちょっとちょっと」
「ごめんなさい、僕は用事があるのでこれで……」
「わたしの弟子になるって話は、どうするの?」
「今回はご縁が……」
 莉子が要の袖を掴んだ。
「要くんが首を縦に振るまでは離さんー!」
「離してください。人を呼びますよ」
「なら、わたしも大声で叫ぶ!」
「何でだよ!」

「誰かー!!!」

 間髪入れずに莉子が叫んだ。
「何で叫ぶんですかっ」
「要くんがわたしを脅迫するけん! 人を呼ぶなんて言って」
「訳が分からないよ!」
 莉子の声を聞きつけてか、人が近付いて来る気配がした。
 要は自分を完全に被害者側だとは思うのだが、要は男子高校生、方や相手は見目麗しき乙女である。
 この莉子という少女の行動原理はまったく理解できないが、彼女の悲鳴を聞いて駆けつけた一般人が要に対しどういう印象を抱くかについては、容易に想像が出来た。

「提案があるんだけど、場所を移しませんか?」
「とか言って逃げるつもりやろ?」
「あなたからは逃げないって約束する」
「信用出来ん。こーとーわーるー」

 そうこうしている間にも、気配がますます近付いて来る。
「くっ……」
 いっそのこと彼女の手を振り払おうかとも考えるが、そうまでして逃げたらやましいことでもあるみたいだ。

「おい、あれじゃないか?」
 ついに近付いていた気配の主達は、要達の姿を捉えた。
 遠巻きに要を指差す姿が視界の端に映る。

「分かった……!」
「え?」
「弟子にでも何にでもなります!」
「本当? 本当に何にでもなるん? わたしの言うことちゃんと聞く?」
「ああ、誓う。だからお願いだ。この場は丸く収めて下さい」
 その言葉に、莉子は実に嬉しそうに目を輝かせた。
 まるで、夢でも叶ったかのような顔でウンウンと何度も頷いて、興奮した様子で要の手を掴んだ。

「分かった。じゃあ、これから道場に行こう。要くんの家の道場。今から。良いよね?」
 言葉も支離滅裂な莉子は、鼻息を荒くして要の手を引き始めた。

 莉子の悲鳴に駆けつけて来た勇敢(ゆうかん)な人達は、その光景を見て。
「何だ、痴話喧嘩か……?」
 と言って、その場を去って行った。

(今日は厄日だ……)
 そんなことを思いながら、要はただただ莉子に手を引かれる歩き
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