デアイ――ソシテ、彼ハ彼女ト
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「じゃあね。君と一緒に戦える日を楽しみにしているよ」
パトカーを降りる際、ヒーローがそんな言葉を投げかけてきた。
要は、「ありがとうございました」とお礼を言ってドアを閉め、走り去るパトカーを一礼して見送った。
庭に置かれた盆栽の脇を通って、玄関の鍵を開ける。
要は、なんとなく仮面の怪人のことを考えていた。
ヒーローしか襲わないはずの怪人。これに要は襲われた。
怪人の思考について考えるなんて、不毛なことかもしれない。
だけど、もし……仮面の怪人が要をヒーローだと断定して、襲いかかってきたのだとしたら……。
「迷惑な話だ……」
玄関を潜る。
「だって僕は……ヒーローにはなれないんだから……」
要は玄関の扉を閉めた。
私立英明高校。
要の通う普通科の高校だ。県庁やオフィス街が近いこともあり、学校の前には、学生の列に混じってサラリーマン風の大人も多く歩いている。
「いよう、要っ。おっはよー」
門の前辺りで、背中を叩かれた。
振り返ると、背後にはやたら爽やかな雰囲気の好青年が立っていた。えくぼの目立つ爽やかな笑顔に、やや茶色がかった爽やかな頭髪。朝練上がりのこの爽やかは、要の幼馴染、中生 正宗(カナオ マサムネ)だ。
「おはよう、正宗」
要と彼は家が近いということ以外、趣味などの接点はほとんど無い。だけど、何となくクラスが一緒だったり、進学先が被っていたりと、一緒に居ることが多い奴だった。
「授業の前にうどん食いに行かない? 朝練したら腹減ってさー」
「いや、僕は普通に食べてきたから」
「普通にって。お前、今一人暮らしなんだろ? もしかしてアレか!? 噂の女子大生が朝ごはんを作ってくれたりしてるのか?」
「違うよ。普通に冷凍パスタを食べてきた」
「そっか。……で、うどんは食いに行く?」
「だからまさに麺類を食べてきたところだってば」
「別に出かける前に麺類を食べたことが、今うどんを食べない理由にはならないだろ」
「何で見た目は爽やかなのに、うどんのことになるとそんなに暑っ苦しんだよ」
なんのかんのと言いつつ、要は正宗と近くのうどん屋に赴き、朝うどんを食べた後に学校へと戻った。
昼休みに半ば嫌がらせのごとく「学食にうどん食いに行こうぜ?」という正宗の誘いをやんわり断り、自分だけ定食を食べた。
「そんなにうどんばっかりで飽きないの?」
「飽きないな」
「運動部なら、肉も食べようよ」
「じゃあ、今度から肉うどんにするか」
「どんだけうどん好きなんだよ……」
そうこうしている内に授業が終わり、放課後になると正宗は部活の練習へと消えていった。
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